《コラム》年次有給休暇の時季指定の扱い

◆働き方改革と時季指定権
 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律で改正後の労基法では、使用者による年5日の年次有給休暇の時季指定権が定められました。
 2019年4月より労働基準法の改正により年次有給休暇の日数が10労働日以上である労働者にかかる年次有給休暇日数の内、使用者が5日の年休の時季指定権を行使しなければならなくなります。その場合、企業で計画年休制度を入れて年休を付与したり、従業員が自分で年休請求をして休んだ場合等、その日数は時季指定権から外して考えられるのでしょうか。

◆計画年休が付与されている場合
 計画年休とは付与された年次有給休暇の内、5日を超える分について労使で協定して計画的に休暇取得日を割り振る事ができる制度ですが、この計画年休の日数は時季指定権の5日から除く事ができます。また労働者本人が時季指定した年休も同様に除く事ができます。

◆半日休暇を取得又は付与した場合
 労働者本人の希望で半日の年休を取得した場合は、これに使用者が同意し本来の取得方法により休暇取得の阻害にならない範囲で適切に運用される限りにおいて問題が無いものとして取り扱うとされており、半日年休については使用者又は労働者が時季指定しても良い事とされています。その場合は0.5日と扱われます。

◆時季指定日に労働者が出勤した場合
 使用者が新労基法で定められる年5日の年次有給休暇の時季指定に違反すると対象労働者1人につき30万円以下の罰金が予定されており、今までには無かった罰則です。
 しかし使用者が時季指定しても、業務繁忙等を理由に労働者が出勤してしまう事もありうる事です。当日の労務提供義務は無いので帰宅をさせるのが前提ですが、労務の提供をさせた場合でも、その後年5日の時季指定権年休が付与できれば違反とは言えないでしょう。
 通達によれば年度当初に労働者の意見を聞いた上で年次有給休暇計画表を作成し、これに基づき年次有給休暇を付与する事等が考えられるとされていますが、年休取得状況を把握する為には年休取得管理簿は必須となるでしょう。

 

ふるさと納税の返礼品にギフト券

2019年度税制改正大綱で、過度な返礼品への規制案が盛り込まれた「ふるさと納税」の周辺が再び騒がしくなっています。大阪府泉佐野市は返礼品に加えて寄付額の最大20%分をネット通販大手「アマゾン」のギフト券にして提供するキャンペーンを始めたと発表しました。ギフト券は10%分と20%分の2種類で、総額100億円分に達したら終了するとしています。市の特設サイトから3月末までの申し込みが対象です。

 寄付金集めの競争激化を抑えようと、政府は返礼品を「調達費が寄付額の3割以下の地場産品」に限るよう定め、6月以降は違反自治体への寄付は制度から除外する予定です。これに対し、泉佐野市は返礼品の調達額を寄付額の4割程度に設定し、17年度には全国首位の約135億円の寄付を集めていることから反発していました。

 中央政界からも規制緩和を求める動きが出始めました。公明党の山口那津男代表は記者会見で「市町村の狭い地域の産品を強要するのは少し固すぎる。ふるさと創生に資する、納税者の意思にも反しないあり方は柔軟であってもいい」と、「地場産品」の定義を市町村から県内などに広げるよう求めました。呼応する声は自民党内でもあるといいます。統一地方選や参院選をにらみ、市町村や利用者に配慮を示そうという動きとみられます。

 ただ、様々な思惑が交錯する中で、各々の「ふるさと」を応援するという制度本来の趣旨が顧みられることはほとんどありません。

<情報提供:エヌピー通信社>

国外財産調書、東京管内で75%

5千万円超の海外資産を持っている人に対し、財産の種類、数量、価額などを税務署に提出することを義務づけた国外財産調書について、国税庁は創設5年目となる2017年分の提出状況を公表しました。それによると、提出件数は前年比4.9%増の9551件、国外財産の総合計は同11.0%増の3兆6662億円でした。初年度の提出件数は5539件、国外財産の総合計は2兆5142億円だったことから、提出件数、国外財産の総合計ともに右肩上がりで順調に伸びていることがわかります。

 国税庁によると、提出者の地域別では、「東京局」が6154件で全体の64.4%を占めました。次いで「大阪局」1331件(同13.9%)、「名古屋局」699件(同7.3%)となり、この3局で85.6%を占めています。日本の富裕層が大都市圏に集中している結果となりました。

 財産総額についてはより顕著な結果となっています。「東京局」が2兆7485億円で、全体の75.0%を占め、大阪局(4274億円、同11.7%)、名古屋局(1906億円、同5.2%)の3局を合計すると9割強(91.9%)を占めています。

<情報提供:エヌピー通信社>

過酷な差し押さえで提訴

税金の滞納に対する過度な差し押さえは生存権の侵害に当たるとして、宮城県大崎市の女性が、県と市に220万円の損害賠償を求める訴訟を仙台地裁に起こしました。女性は長男との二人暮らしで、世帯収入は女性のパートによる月収8万~11万円と隔月の年金約7700円のみでした。2008年ごろから国民健康保険税や市民税などを納められず、17年5月の時点で約140万円を滞納していたそうです。

 これに対し、同年から徴収業務を担当した宮城県地方税滞納整理機構は、分割納付の申し出に応じませんでした。女性は母から借金をして100万円を納めましたが、同機構は残額も納めるよう求め、同年9月に女性の口座に振り込まれた給与約8万8千円を差し押さえて納付に充てました。その結果、女性の口座残高は0円になりました。

 原告側は、生活保護が必要なほど困窮している世帯の財産を差し押さえることは生存権の侵害だと主張しています。さらに給料の支払い当日に給料を預金として差し押さえるのは「脱法行為」と訴えています。

 国税徴収法では滞納者と家族の最低限の生活を保障するため、給料などを「差押禁止債権」として差し押さえてよい金額の上限を厳格に定めています。しかし同法で差し押さえを禁止する財産はあくまで「給与債権」であり、それ以外の財産については触れていないことから、給与が口座に振り込まれた瞬間に給与債権ではなく「預金債権」に変わったとして、上限なく差し押さえる手法が全国で乱発されています。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》勤怠時間の把握と勤怠システム

◆勤怠管理をしていますか?
 近年、労働時間の勤務時間を記録していないで未払い残業などを請求されるケースが増えており、一旦未払い残業代を請求されると会社側が不利な事が多く、ほぼ無力で請求された通りの結果になる可能性が高い状況になっています。
 働き方改革の一環で労働安全衛生法の改正もあり、2019年4月からは管理職の労働時間の把握を企業に義務付ける方針です。また、労働基準法の改正で残業時間の上限規制(中小企業2020年4月施行)が強化され、従業員側と労使協定を交わしても年間720時間、1カ月で100時間未満まで、2カ月から6カ月平均で月80時間以内となり、上限規制が守られない時は「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」と厳しい罰則も予定されています。
 まだ、労働時間を把握していない企業では、勤怠管理をして従業員の労働時間を把握することは急務と言えるでしょう。

◆勤怠管理の方法とハードル
 皆さんの企業では勤怠管理方法は紙、Excel、タイムカード等何を使用しているでしょうか。勤怠管理はタイムカードや紙による管理からITを活用した勤怠管理システム導入が進んできています。勤怠管理システムとは、自動的に勤怠が集計され意図していた集計結果が表示されるものです。
1.出勤簿(勤務表)への客観的な時刻の記録が可能
2.労働時間の集計を自動化する
3.労働時間の管理強化と業務の効率化を両立する、というものです。
 導入のメリット、デメリットとしては、
(1)労働時間の客観的把握
(2)労働時間、休暇取得等の管理強化
(3)時間集計、休暇等の業務効率化
上記の(1)と(2)は簡単に実現できますが(3)の業務効率化の実現ができるかどうかがポイントになります。
 業務効率化がなぜ重要なポイントかと言えば、勤怠システムをそのまま使っただけではできない勤怠ルールを定義してシステムに落とし込む必要があるからです。就業や勤務形態等の状況に対応させる設定が必要です。いちいち手修正をしていては効率化が図りにくくなってしまう事があるからです。

《コラム》パートから正社員になった場合の有給休暇

◆パートから正社員に引き上げた時
 社内にいい人材がいて、パートタイマーで働いていた方を正社員にして是非長く働いてもらいたいと考えた時、パート本人からフルタイムで働けるようになって正社員を希望した時等、パートタイム労働者から正社員に引き上げる理由は様々です。その場合は今まで働いていた期間とこれからの身分との関係で年次有給休暇の扱いは変わるのでしょうか? 今まで保持していたパート時代の有給休暇日数は引き継がれるのでしょうか?
 パートタイマー労働者の有給休暇は比例付与で週の所定労働日数や年間の働く日数で変わります。パートタイマーで働いている途中で正社員に切り替わった時は有給休暇の付与日数はどう変わるでしょうか?

◆年次有給休暇付与日数の考え方
 年次有給休暇付与日数を計算するポイントは勤続年数と付与する日(基準日)の雇用契約内容です。
 まず勤続年数ですがパートとして雇用した日から通算して考えます。毎日勤務でなくとも勤務時間数が短くとも、継続して働いていれば雇用契約の最初の日からが勤続年数になります。パートとして雇用された日から6か月後、1年6か月後と付与する日(基準日)が到来し、基準日に締結している契約により付与する日数が決まります。注意が必要なのは、いったん白紙に戻して正社員になった時点から改めて6か月後に10日を付与する取り扱いは正しくないことです。

◆正社員に切り替えた場合の例
 週3日勤務パートタイムの方が週5日勤務の正社員に変更した場合、3年6か月目に正社員になった時は正社員用の有給休暇日数の14日が新たに付与されます。
 また、3年7か月目に正社員になった時は切り替え時に付与し直すのでなく、パート時で直近に付与されている日数のままで、次の基準日の4年6か月目に新たに16日が付与されます。パート時代の未使用日数分は翌年まで繰り越されます。
 雇用契約内容が変わると労働条件も変わりますので雇用契約書に年次有給休暇日数も明示しましょう。

 

【時事解説】キャッシュレスは日本に根付くか その2

世界の多くの国でキャッシュレス化が進んでいます。中でも、最先端をいくスウェーデンでは、「現金お断り」を掲げる店もあります。また、銀行の多くがATMの閉鎖に取り組んでいる状態です。

 隣国の韓国もキャッシュレス決済が浸透しており、比率は90%に及ぶといいます。日本では、財布からお金を出す光景が一般的で、キャッシュレス決済の比率は18%程度にとどまっています。とはいえ、日本でも、国を挙げてキャッシュレス化に取り組んでいます。検討会では、2025年までにキャッシュレス化を40%に拡大し、将来は80%を目指すといいます。最近では、消費税率引き上げに合わせ、キャッシュレスで決済した消費者にはポイントを還元するといった施策が検討され、話題になりました。

 企業にとって、キャッシュレス化のもう一つのメリットはマーケティングデータが得られることです。カードや電子マネーで支払いを済ませると、履歴から顧客の年齢、性別、住まいなどのデータが蓄積されます。さまざまな属性のデータから、属性ごとに、どのような商品を好むかがわかるようになります。結果、自身の店でどの商品をすすめるのが良いか、売上をあげるのに役立つ情報が得られます。

 スマホ決済の利用者が増える中、今、多くの企業がキャッシュレス関連の市場に参入しています。運営会社の収益源は手数料です。キャッシュレス化が進めば進むほど、多額の利益が見込めます。

 このほか、支払いのシステムを構築するIT企業や、データを活用し、新たな提案をするコンサルタントなど、キャッシュレス化を取り巻く市場には多くのビジネスチャンスがあります。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】キャッシュレスは日本に根付くか その1

「キャッシュレス」の波が押し寄せ、お金は大きな変化を遂げようとしています。いまや世界においての支払いは、クレジットカードや電子マネー、スマホなどで済ませるスタイルが浸透しています。

 クレジットカードや電子マネーの魅力は、お釣りや小銭のわずらわしさから解放される点が一つです。中でも便利なのがスマホの決済です。お財布からお金やカードを取り出す必要がなく、スマホをかざすだけで支払いが完了。荷物があっても片手で決済できるので便利です。

 また、ランチや飲み会で割り勘をするとき、同席者がLINEのアプリを持っていれば、同席者同士、1円単位で送金できます。結果、小銭がなくて、だれかが多く払うといったこともなくせます。

 もう一つのメリットはお金の管理のしやすさです。カードや電子マネーの中には、利用履歴がパソコンやスマホで確認できるものがあります。レシートをとっておかなくても、何にお金を使ったか、合計額がわかり、自身で集計するよりも管理が簡単になります。

 メリットは利用者だけではありません。現金の比率が低くなれば、店側は現金を盗まれる心配が減り、警備にかかる経費を削減できます。また、銀行などはATMの数を減らすことになるので、ATMの維持・管理のコストが減少、それに伴いお金の輸送も減るので犯罪に巻き込まれる危険性も少なくなります。ほか、小売店ではレジのお金を数えて、残高を確認する必要もありません。お釣りを間違えるといったミスも減らせます。

 こうした数多くの利便性の高さに気づいた顧客や店が増えることで、さらにキャッシュレス化が進むと考えられます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

 

【時事解説】中小企業における多能工化・兼任化の推進 その2

では、中小企業におけるIT利活用にあたっては具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで「中小企業白書2018年版」において、非製造業(温泉旅館)でありながら業務を見直したことで多能工化を実現し、生産性を向上させた企業として紹介された、株式会社グランディア芳泉(本社:福井県あわら市)の取組みについてみていきましょう。

 株式会社グランディア芳泉は、あわら温泉地域内にある1963年創業の温泉旅館です。
 繁忙期に従業員が休めない状況が続くという状況に対処するため、同社では2015年末に、業務効率化による従業員の負担軽減を図る取組みを開始しました。例えばこれまで夕食時間を2部制としテーブルセッティングしていたのを廃止し、顧客が好きな時間に来る方式に変えたことで、夕食の準備時間の短縮と顧客満足度の向上を両立させることができました。

 続いて、分業制だった従業員の多能工化に取組みました。従業員に丁寧に説明を行いつつ改革を実行していった結果、仲居がレストランを手伝ったり、仲居以外のスタッフが宴会の仕事を手伝ったりなど、従業員間で互いの業務の支援を行う体制が構築されていきました。

 長時間労働の是正に苦労する企業が多い旅館業の中で、同社は残業を一人当たり週2時間程度まで削減し、その上で残業手当の減少分は賞与を増やすことにより従業員に還元しています。2017年4月からは週休2日制をほぼ導入し、各従業員が取得する年間休日を30日増やすことにも成功しました。

 このように従業員に丁寧に説明を行いつつ多能工化を進めることで、従業員の能力向上や業務平準化による負担軽減を図ることが可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における多能工化・兼任化の推進 その1

中小企業において人手不足が深刻化する中、多能工化・兼任化の推進によって業務量の平準化や業務の効率化を図ることが求められています。
 「中小企業白書2018年版」において、中小企業における従業員の多能工化・兼任化の取組みについて実施されたアンケート調査の結果についてみていきましょう。

 中小企業における従業員の多能工化・兼任化の取組状況についてみると、回答企業の73.3%が多能工化・兼任化に取り組んでいることがわかります。また業種別には製造業での取組割合が88.1%と他の業種に比して高くなっています。

 従業員の多能工化・兼任化を進めるに当たって、併せて行った取組みの内訳をみると、「業務マニュアルの作成・整備」、「従業員のスキルの見える化」の回答割合が特に高くなっています。「業務マニュアルの作成・整備」については、従業員に新たな業務を担当させる上での学習環境の整備としての役割を担っているものと考えられます。また、「従業員のスキルの見える化」は、各従業員が有している能力の確認や、今後習得させるべき能力を定めるために必要なものと推察されます。

 従業員の多能工化・兼任化によって得られた効果についてみると、「従業員の能力向上」と回答した割合が52.7%と最も高くなっており、以下「全体の業務平準化による、従業員の負担の軽減」35.6%、「繁忙期・繁忙部署における業務処理能力向上」35.1%の順となっています。

 このように多能工化・兼任化により、業務量が平準化され従業員の負担軽減につながるとともに、他部署からの支援に回れる人材が増えることで処理能力の向上につながるなどの効果が期待されるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)