【時事解説】中小企業における業務プロセスの見直しによる生産性向上②

では、中小企業において、具体的にどのような業務プロセスの見直しによる生産性向上の取組がみられるのでしょうか。そこで「中小企業白書2018年版」において、業務効率化を実現させ生産性を向上させた企業として紹介された株式会社小豆島国際ホテル(本社:香川県土庄町)の事例についてみていきましょう。

 株式会社小豆島国際ホテル(従業員125 名、資本金1億円)は、1963年創業の客室120室のリゾートホテルを運営する事業者です。 小豆島では少子高齢化と人口減少が進む状況において、同社が今後も人材を確保し続けていくためには、生産性向上を進め労働条件を整備していくことが重要だと考えていました。

 そこで同社では、外部の経営コンサルタントを活用し業務の見直しを進めました。総支配人のリーダーシップのもと、業務改善に意欲的な従業員とコンサルタントで構成するチームを編成して客室整備業務等における既存の業務の無駄を洗い出し、不要業務の廃止や見直しを行いました。 例えば、一部客室に急須の設置をやめてマグカップとスティック茶に簡略化を行った結果、急須の漂白時間が短縮され、年間で30 時間程度の業務時間の削減につながりました。このように業務の必要性を精査し、廃止や見直しを進めることによって、年間で1,800時間もの業務時間の削減効果が得られました。 さらに、一連の取組をきっかけに従業員が自発的に改善提案を行う風土が広がったことで、個々の従業員の創意工夫が発揮され顧客対応も改善しました。

 このように業務プロセスの見直しを進めることは、業務の効率化だけでなく付加価値向上や人材確保の効果ももたらすのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業における業務プロセスの見直しによる生産性向上①

中小企業において人手不足が深刻化する中、現有の従業員を生かすべく労働生産性向上に向けて、業務プロセスの見直しによって業務効率化を図ることが求められています。
 以下で、「中小企業白書2018年版」において実施した、「人手不足対応に向けた生産性向上の取組に関する調査」に基づき中小企業における業務プロセスの見直しの現状と課題などについてみていきましょう。

中小企業における業務見直しの実施状況をみると「部門単位で業務の見直しを行っている」が26.7%、「個々の従業員のレベルで日々工夫しながら業務の見直しを行っている」が24.9%と続いており、多くの中小企業が、業務見直しの取組を行っていることがわかります。

 業務見直しの具体的な取組内容について回答割合の高い順にみると、「業務の標準化・マニュアル化」が40.2%、「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」が40.0%、「業務の見える化」が30.6%となっています。

 業務見直しに取り組んだきっかけについて回答割合の高い順にみると、「人手不足対応」が46.5%、「業務に非効率・無駄を感じた」が 41.0%、「働き方改革への取組」が31.4%となっています。

 業務見直しを行うに当たっての課題についてみると、「業務に追われ、業務見直しの時間が取れない」が 50.6%と他の項目に比べて高い割合を示しており、次いで「取組を主導できる人材が社内にいない」24.1%、「取組の目的や目標が上手く設定できない」17.5%の順となっています。

 このように、中小企業における業務プロセスの見直しにおいては、業務見直しの時間の確保に加え、推進役となる人材の不足等、業務見直しを行うための環境整備も課題となっているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

成人年齢引き下げを相続税にも適用

民法改正で成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられることに伴い、税法でも現在20歳以上や20歳未満となっている様々な年齢要件が18歳に改められます。新しい年齢要件は2022年4月1日以後に得た財産にかかる相続税、贈与税に適用されることとなります。

 これまで「20歳以上」となっていた要件が「18歳以上」に改められるのは、相続時精算課税制度や直系尊属から贈与を受けた時の贈与税の特別税率、事業承継税制とその特例制度など。またこれまでの「20歳未満」から「18歳未満」へと変更されるのは、相続税の未成年者控除が該当します。

 なお税理士法4条では、税理士となる資格を持たない者に未成年者を挙げており、現行では20歳未満だと税理士になれませんが、成人年齢の引き下げに伴い、18~19歳の人も資格を得られるようになります。

<情報提供:エヌピー通信社>

(後編)社会保険診療報酬課税の特例とは?

(前編からのつづき)

 例えば、心電図の機械や内視鏡などの医療器具が壊れて除却した場合など、通常は資産損失として計上できるものなども、この特例を選択した場合は、これらの資産損失・減価償却費、専従者給与、材料・消耗品等仕入、貸倒損失などの一切が社会保険診療報酬課税の特例経費に含まれることになりますので、追加での費用計上は認められていません。
 そこで、上記のケースでは、実額計算をして有利か不利かの判定を行い、実額計算のほうが有利であれば、この特例課税は適用しないで計算することができます。

 したがいまして、いつでもこの判定ができるように、概算経費率の計算だけでなく、実額計算も常にしておくことが大切ですので、帳簿、領収書、請求書なども常に保存・管理・記録しておくことが必要です。
 ただし、概算経費を適用する場合であっても、社会保険診療報酬以外の収入に対応する必要経費は実額によりますので、ご注意ください。
 なお同様に、医療法人も社会保険診療報酬課税の特例を適用できます。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)社会保険診療報酬課税の特例とは?

社会保険診療報酬課税の特例とは、社会保険診療報酬に係る費用を、実際に発生した実額ではなく、一定の経費率を乗じて算出した概算経費を必要経費として算入することを認めるものです。
 具体的には、医業又は歯科医業を営む個人が、社会保険診療報酬が5,000万円以下であり、かつ、その個人が営む医業又は歯科医業から生ずる事業所得に係る総収入金額に算入すべき金額の合計額が7,000万円以下であるときに適用できます。

 必要経費率は、その社会保険診療報酬に係る収入の階層に応じて、2,500万円以下の場合の72%から4,000万円超5,000万円以下の場合の57%までの4段階に区分されております。
 例えば、年間の社会保険診療報酬が4,000万円で、その社会保険診療報酬に係る実額経費が2,000万円の場合、社会保険診療報酬に係る概算経費は2,770万円(4,000万円×62%+290万円)となり、実額経費と比べて所得税計算上は有利になります。
 しかし、事業所得の計算上の資産損失などが生じた場合は、必ずしも概算経費の方が有利だとは言えません。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年1月4日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

【時事解説】社外取締役の役割 その2

企業の消長は何といっても経営トップの能力に左右されます。したがって、取締役会の最も大きな役割は経営トップの選任にあると言われます。経営トップの選任においても、社外取締役の役割が増大しています。

 我が国において、社外取締役がトップの選任についてアメリカほど重要な役割を果たしていいかどうかには議論のあるところです。というのは、アメリカと日本では経営者を選抜する環境が大きく違うからです。アメリカでは経営者は社内外から広く候補者を募り、選ばれることが通例です。そうした場合、社外取締役が社内外を問わず経営成績を上げる能力を評価して、トップ選任に際して重要な役割を果たすことにそれほど違和感を覚えません。

 しかし、日本では多くの会社で社内からの生え抜きの人材をトップに据えます。そこでは経営能力は当然必要ですが、その他に人柄とか社内の人望といった人格的要素も無視できない要因として存在します。そうした数字に還元できないその会社特有の人間関係まで社外取締役が把握できるのかという点について、やや疑念が残るのです。

 労働市場や経営者市場の流動化が不十分な日本で、社外取締役が経営トップの選任にどのように関与するかは難しい問題です。アメリカのような経営者選抜方法が一般化すれば、社外取締役の役割は重くなるでしょう。しかし、社内出身者がトップに選ばれるという状況が続くなら、社外取締役がトップ選任に果たす役割が定着するまでにはもう少し時間がかかるような気がします。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】社外取締役の役割 その1

上場企業で社外取締役が増加しています。これまで日本企業の取締役は社内の生え抜きがほとんどで、意思決定が内向きになり過ぎると、かねて批判されていました。社外取締役の数を増やし、取締役会に社外の多様な意見を反映させようというものです。そこで、社外取締役の果たすべき役割を投資の意思決定とトップの選任について考えてみます。

 投資の意思決定では、採算性があると判断されれば投資を行い、採算性がなければ投資を行いません。情報量の違いによる若干の相違はあるかもしれませんが、合理的判断をする限り、そこに、社内取締役と社外取締役に本質的な差異は生じないはずです。違いが生じるとしたら、投資できずに余ったキャッシュの使い方にあります。

 社内取締役は入社以来ずっと同じ会社に勤務し、会社に愛着を持ち、多くの仲間が社内にいますから、会社の存続を第一に考えます。会社の外部環境はどのように変化をするか分かりません。ですから、社内取締役はまさかのときに備えて、余剰キャッシュをできるだけ蓄え、社内留保を多く持とうという発想をしがちです。一方、社外取締役は会社内で人生を送ってきたわけではありませんから、株主あるいは一般投資家の利益を社内取締役より強く意識します。そこで、投資に使い切れない余剰キャッシュが生じれば、社内留保よりも配当等の株主還元を優先することになります。

 今まで、日本の企業は社内留保に偏りすぎる傾向があったので、社外取締役の増加が社内留保と株主還元のバランスの改善につながることが期待されます。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》健康保険被扶養者認定事務の変更

◆平成30年10月1日より変更
 日本年金機構が受けつける「健康保険被扶養者異動届」の添付書類の取り扱いが変更となり、日本国内に住む扶養家族の認定の際、申立てのみによる認定は行わず証明書類に基づき身分関係と生計維持関係を確認の上認定する事になりました。
 一定の要件を満たしている場合には証明書類添付を省略できます。

◆届出に必要な添付書類と省略事項
 扶養認定を受ける方が被保険者と同居している時は下記の(1)と(2)、別居している時は(1)(2)(3)の書類が必要です。
(1)続柄の確認……戸籍謄本か抄本あるいは住民票(同居で被保険者世帯主である事、提出日より90日以内に発行されたもの)
省略できる時……被保険者と扶養認定を受ける方双方のマイナンバーが届出に記載されている事と、扶養認定を受ける方の続柄が届書の記載と相違ない事を事業主が確認し備考欄の「続柄確認済み」の□にレを付している、又はその旨記載している。
(2)収入の確認……年間収入が「130万円未満」であることを確認できる課税証明書等(60歳以上の方、障害厚生年金の受給要件に該当する程度の方は180万円未満)
障害・遺族年金、傷病手当金、失業給付等非課税対象の収入がある場合、受取金額の確認ができる通知書控え
省略できる時……扶養認定を受ける方が所得税法上の控除対象配偶者又は扶養親族である事を事業主が確認し、事業主確認欄の「確認」を○で囲む。
又は扶養認定を受ける方が16歳未満の場合は省略できます。
(3)別居の場合……認定には別居の確認が必要になります。仕送りの事実と仕送り額が確認できる振り込みの通帳写しや、現金書留で送金するならばその控え
省略出来る場合……扶養認定を受ける方が16歳未満又は16歳以上の学生
 今まで被扶養者の認定について健康保険組合ほど証明は求められていませんでしたが、年金機構でも添付書類を求められるようになりました。
 届出様式も協会管掌事業所用被扶養者異動届が新しくなりました。

出国税が1月7日スタート

日本を出国する人に一律1千円を負担する新税「国際観光旅客税」が、1月7日にスタートします。恒久的に徴収する国税の新設は、1992年に導入された「地価税」以来27年ぶりのことです。

 課税対象となるのは、日本人か外国人かにかかわらず、飛行機や船で外国に渡航する、2歳以上の全ての人。例外的に、日本への入国後24時間以内に出国する乗り継ぎ(トランジット)客は課税されず、また外交官や公用機で出国する政治家、飛行機や船の乗務員なども対象外となっています。

 当初は2019年4月のスタートを予定していましたが、2月の「春節」のシーズンに訪れる大量の中国人を当て込んで、同年1月に前倒しされました。税収は、旅行に関するインフラの整備、海外への情報発信強化、観光資源の充実などに利用されます。

 なお、同税が導入される1月7日の前日までに発券した航空券については、実際のフライトがそれ以降であっても税を課されません。ただし回数券などで7日以降に出国日が決まるケースや、いったん発券をして7日以降に出国日を変更するケースなどは課税対象となります。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》世界中で動き出したCRS

◆3つの情報交換
 租税条約による情報交換には、1.要請に基づく情報交換、2.自発的情報交換、及び3.自動的情報交換の3つの形態があります。
 「要請に基づく情報交換」は特別な場合です。「自発的情報交換」はついでに得た情報の提供なので偶然的なものです。「自動的情報交換」は法定調書情報の税務当局間の相互送付で、これが期待される基本形です。

◆OECDのCRS
 自動的情報交換については、2017年から、わが国を含む100以上の 国・地域が賛同して、まさに動き出し始めている、OECDのCRS(Common Reporting Standard の略:共通報告基準)があります。
 CRSとは、非居住者の金融口座に関する情報を各国の税務当局間で自動的に交換するための共通化された国際基準のことです。共通化された国際基準を各国で適用することにより、事務負担の軽減や効率的な情報交換を実現しつつ、外国の金融機関の口座を利用した国際的な脱税及び租税回避に対処することを目的としています。

◆日本の国外財産調書の提出状況
 国外財産調書の提出件数は次のように、年々増えていますが、この程度の数字であるわけがない、というのが多くの見方のようです。
 平成25年分…………5.539件
 平成26年分…………8,184件
 平成27年分…………8,893件
 平成28年分…………9,102件

◆CRS初回交換情報
 国税庁は、CRS情報の交換を本年9月までに行うことにしていた、その初回交換の件数等がとりまとめられ公表されました。
 日本国内の非居住者の金融口座情報については、58か国・地域に89,672件提供し、他方、日本の居住者に係る金融口座情報については、64か国・地域から550,705件受領しました。
 予想外に多かったとのニュアンスが滲み出ています。また、公表文は、受領した金融口座情報は、国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他既に保有している様々な情報と併せて分析する、としています。
 なお、CRSには、アメリカは非加盟です。FATCAがあるためです。日本がアメリカから得ている自動的情報交換データは租税条約に依るものです。