【時事解説】事業承継・引継ぎ支援センターについて その1

中小企業庁では、2020年6月の産業競争力強化法の改正に伴い、これまで第三者承継支援を行っていた「事業引継ぎ支援センター」に、親族内承継支援を行っていた 「事業承継ネットワーク」の機能を統合し、事業承継・引継ぎのワンストップ支援を行うべく発展的に改組し、2021年4月以降各都道府県において事業承継・引継ぎ支援センターとして活動を開始しました。

 事業引継ぎ支援センターは、後継者不在に悩む中小企業・小規模事業者に対して、第三者への承継(引継ぎ)を支援するために、2011年度に7か所設置されることでスタートしました。その後、各都道府県に設置され、2016年度には全都道府県に設置されました。事業引継ぎ支援センターでは後継者不在の中小企業・小規模事業者と譲受を希望する事業者とのマッチングを支援するとともに、とくに後継者不在の小規模事業者と創業希望者とのマッチングを支援する後継者人材バンク事業の運営を行ってきました。

 事業承継ネットワークは、地域の支援者同士が個別企業支援で連携できる地域プラットフォームを確立し、事業承継に向けた気付きの機会を提供することを目的として、2017年度より都道府県単位で、商工会・商工会議所、金融機関などを構成機関として構築されました。同ネットワークでは事業承継診断を起点としたプッシュ型の支援に連携して取り組むとともに、地域の専門家と連携して踏み込んだ事業承継支援を行ってきました。

 これらの両機関を事業承継・引継ぎ支援センターとして統合することで、事業承継・引継ぎのワンストップ支援を行うことが可能となり、親族内承継や第三者承継(M&A)などの幅広い相談により柔軟に対応することが期待されるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》自社株買収M&A

◆会社法に新たな組織再編制度が創設された
 会社法制の改正が2019年12月4日に成立し、同12月11日に公布され、本年3月1日に施行されました。この改正法で「株式交付」という新しい制度が創設されました。改正会社法により創設された「株式交付制度」とは、合併、分割、株式交換、株式移転という組織再編制度の新たな一種で、他の会社を子会社にするために株式を取得し、その対価として自社の株式を交付する制度です。
 株式交換が100%の完全子会社化を目的とするのとは異なり、株式交付の目的は、議決権の50%超保有の子会社化です。
 この株式交付制度の利用で、大規模な買収の実現、資金が潤沢でない企業による買収の増加、自己株式の有益な処理方法、等々M&Aの振興の期待が高いところです。

◆既存の自社株対価M&A
 2018年の産業競争力強化法の改正を受けて、措置法には、買収に応じた株主が対価として買収会社株式を取得した場合、その株式を売却しない間の課税は繰り延べられるとの制度が設けられていました。
 ただし、その前提として、企業買収が生産性向上につながることなどを示す事業再編計画の認定を受けた認定特別事業再編事業者に該当する必要がありました。
 今年の税制改正では、この制度に係る条文から事前認定に係る文言が消えました。

◆税制への株式交付制度の取込み
 文言消滅は、課税繰り延べの税法条規の前提が、産業競争力強化法ではなく、改正会社法の株式交付制度に移ったからです。
 株式交付制度の適用があったら、それにより取得した株式については、その株式を売却するまでは、課税が繰り延べられるとの制度に衣替えしたわけです。
 また、改正税法では、子会社化のための株式交付に際し、現金での株式買収が併用されていても、買収額の2割未満なら、課税繰り延べ税制適格の株式交付に該当するとしています。
 なお、会社法としては、株式交付は、組織再編制度の一つなので、他の制度同様、株式交付計画の策定、株主総会の特別決議、債権者保護手続き、等々の規定を置いていますが、税法は、株式交付制度に対して、他の組織再編制度のように法人税法本法に取り込むのではなく、措置法の中に規定を置いたままにしています。

《コラム》日本経済の救世主になれるかM&A促進税制

◆政府がM&Aに熱い視線
 経済産業省は、1年ほど前に公開した「中小M&Aガイドライン」でM&Aの後押しをする姿勢を鮮明にしています。
 「中小M&Aガイドライン」によると、2025年までに、平均引退年齢の70歳を超える中小企業の経営者が約245万人おり、うち半数の約127万人が後継者未定とのことです。
 廃業による経営資源の散逸が積み重なることにより、優良な経営資源が活用されないまま喪失されてしまうことは、日本経済の発展にとって大きな損失との認識で、M&Aの普及がその対策として有効な切り札であり、生産性の向上にも資するとしています。そして、10年で60万、年平均10万のM&A契約を成就するとの計画を立てています。

◆計画実現のために役割喚起
 そのため、売り手・買い手を繋ぐM&A専門業者の活性化を期待するとともに、商工団体、金融機関、弁護士・公認会計士・税理士といった各分野の専門家に向けても、それぞれの分野別にM&A支援として期待される役割や留意点などを提示しています。
 M&A業界は、30年ほどの歴史の新興産業で、現在の専門業者数は300社程度とのことです。日税連もホームページでM&Aのマッチングをすすめています。

◆切り札としてのM&A促進税制
 令和3年度税制改正の中に、M&A促進税制が二つあります。
1.株式交付M&Aでの譲渡益繰延制度
2.M&A投資リスクに備えるための株式取得価額の70%損金算入制度
 株式交付の場合の譲渡益繰延制度創設は、2019年中に経産省が改正要望事項としてあげていたものですが、会社法の株式交付制度創設の施行予定が2021年3月1日となっていたので、1年遅れでの立法となりました。これは、売り手側への優遇税制です。
 もう一つの優遇税制は、買い手側に対するものです。
 M&A対価の70%損金算入の新制度の要件は次の内容です。
・青色申告中小企業者が対象
・経営力向上計画による取得
・株式の取得価額10億円以下
・投資損失準備金の計上
・6~10年経過時準備金の取崩し
・中小経営強化法改正が前提
・令和6年3月31日まで適用

《コラム》労災保険特別加入の対象拡大

◆新たに3業種が追加
 労災保険は事業に雇用されている労働者の業務上のけがや傷病を補償するものですが、災害発生状況の多い個人事業主に対しても加入が認められている特別加入制度があります。現在は中小企業事業主、建設業の一人親方、農林漁業の従事者、海外派遣者、個人タクシー業者、個人貨物運送業者等が特別加入の対象者ですが、4月1日より対象範囲が拡大されることになりました。

◆新たに対象となる業種
①芸能従事者……テレビや映画、舞台の俳優・監督・演出家・スタッフ・音楽家等。芸能従事者は業務上のけがや事故が多いことから特別加入の対象になることを強く希望していました。長年の議論によって認められることとなりました。
②アニメ―ション制作従事者(アニメーター)……時代とともにアニメーション制作も増え、雇用されていない制作者が多くいることから対象となりました。
③柔道整復師
 厚労省ではこれら3業種の就労者は約29万人いるとみて、約1万5000人の加入を想定しているとのことです。

◆創業支援等措置の高齢者も加入可能に
 労災保険の特別加入の対象拡大は4月1日施行の高年齢雇用安定法改正(70歳までの雇用努力義務)によって新設された創業支援等措置の対象者にも適用されることになりました。
 創業支援等措置は65歳から70歳までの労働者の就業機会を確保するための高齢者就業確保措置の1つで、雇用にはよらないため業務委託契約を締結する必要があります。企業側も措置の実施に関する計画書の作成、労働者代表者との同意が必要になります。

◆特別加入をするには
 労災保険の特別加入はそれぞれの業種の特別加入団体(中小企業は事務処理を委託する労働保険事務組合)を通じて所轄の労働基準監督署に手続きを行うことで補償を受けることができます。新しい業種の加入希望者は既存の団体に加入するか、新たに特別加入団体を設立することになります。

《コラム》配偶者手当の見直しについて

◆配偶者手当の見直し検討を
 成果主義が言われ始めたころから、基本給に加えて支給される各種手当の見直しが行われるようになりました。特に配偶者手当については、女性活躍や同一労働同一賃金、雇用の多様化などの影響により、廃止する傾向は進むと思われます。
 配偶者手当は、パートタイム労働で働く配偶者の就業調整の要因として指摘されています。これによって賃金相場の上昇が抑制され、あるいは女性の能力を十分に発揮できないなどの影響があり、企業が人的資源を十分に活用できない状況をもたらしているとされます。
 その状況を改善するため、厚生労働省は、配偶者の働き方に中立的な制度となるよう配偶者手当の見直しを進めることが望ましいとし、参考となるリーフレットの改定版を公表しました。(配偶者手当の在り方の検討に関し考慮すべき事項 (mhlw.go.jp))

◆手当見直しのポイントと事例
 廃止する場合の具体的な事例としては、該当額を基本給に組み込む、子供・障害者を対象とした手当を創設するなど、人件費総額を維持した事例があります。また2~3年ほどの経過措置期間を設けて、徐々に減額していく、あるいは賞与で補填するなどの対応を行った企業もあります。企業個別の事情に則った検討が必要ですが、ポイントとしては、①ニーズの把握など従業員の納得性を高める取組、②労使の丁寧な話合い・合意、③賃金原資総額の維持、④必要な経過措置、⑤決定後の新制度についての丁寧な説明、があげられます。
 見直しを行うにあたっては就業規則の変更となりますので、その変更に合理性があるかどうか、必要な手続についても考慮しましょう。
 手当の見直しは従業員の収入に直結する話ですので、労使間の丁寧な話合いが求められます。また、配偶者手当だけではなく、給与制度全体を見直す機会にするのもよいでしょう。
 相談先としては、都道府県労働局や働き方改革推進支援センターに窓口があります。

《コラム》リモートワークでの人事評価

◆改めて人事評価の基本を
 リモートワークが推進される中、決算期を迎える企業では、人事評価の時期が近づいてきていると思います。部下の姿が見えない中で、どのように評価を行えばよいのか、とまどっている管理職も多いと思われます。
 一方で、部下の姿が見えないからこそ、仕事の成果や組織への貢献そのものに着眼して評価を行える状況ともいえます。これを機会に、管理職に対して、改めて評価基準や適正な評価方法を徹底しましょう。
 一般にいわれる陥りやすい評価エラーとしては、ハロー効果(ある部分だけを見て全体を評価してしまう)や、近接誤差(評価時期に近い出来事を過大に評価してしまう)などがありますが、リモートワーク下において特に気を付けるべきは、以下の2つと考えられます。
<中心化傾向>
 複数人に対して評価を行った際、優劣の差がつけられず標準評価によってしまうこと。評価対象の部下についてよく理解していない場合に起こりやすい。
<論理的誤差>
 「後輩の面倒見がよい人間は、リーダーシップもとれている(だろう)」など、関連がありそうな項目について、類似した評価をしてしまうこと。具体的な事実やデータを重視せず、評価者の頭の中だけで考えてしまうと起こりやすい。

◆評価エラーを回避するために
 前述の2つの評価エラーは、部下が仕事をしているプロセスが見えにくいことによって発生しやすいと考えられます。これらを回避するために、まずは評価基準に照らして、評価すべき具体的な事実や対象を見定めましょう。オンラインの利点は、メールなど文字での記録が残るため、あとから事実確認をしやすいということがあります。
 やはり、部下とのコミュニケーションも大切です。結果だけではなく、そのプロセスを確認しましょう。どのようなことを考え、工夫したか。誰と協働して、どういった困難があったか。評価は、能力開発の機会でもあります。面談を制度化していない場合には、ぜひ対話の時間をとって、今後期待することも話してみてください。

【時事解説】広がりを見せるGX、革新的技術と企業の取り組み その2

今日、社会でGX(グリーン・トランスフォーメーション)が加速するといわれています。GXとは環境に関する技術を活用して、社会を変革していこうとするものです。政府は温暖化への対応を成長の機会と捉え、2020年12月に「グリーン成長戦略」を公表。世界各国でも脱炭素化に向けた動きが加速しています。

 こうした流れの中、企業にもGXを加速する動きがみられるようになりました。ある損害保険会社では、新組織「グリーン・トランスフォーメーション タスクフォース」を立ち上げ、GXに取り組んでいます。具体的には、洋上風力発電事業に特化した保険商品の開発や、蓄電池や水素の活用を促進するため、これら事業のリスクを補償する保険商品の研究・開発、ほかノウハウを活かしたコンサルタント業務などに取り組むといいます。

 また、NTTは使用電力が国内発電量の1%を占めるといわれており、脱炭素は大きな課題となっています。そこで、消費エネルギーの中で、太陽光発電などの再生可能エネルギーの占める割合を増やそうと取り組んでいます。ただ、太陽光発電など、発電量は天候といった自然環境に左右される点が難点です。

 こうした課題を解決するため、同社は自社ビル内に大容量の蓄電池を置き対応することにしました。発電した電気が使い切れずに余ったときは、ビル内の蓄電池に電気をためておき、不足した時に使用するというものです。NTTは全国に約7300の通信ビルを有しています。そこに、大容量の蓄電池を置けば、「蓄電所」としての役割を担うことができます。結果、太陽光発電などでも安定して電気を供給できるようになります。このように、GXに取り組む企業が増え、今後、さらにGXは加速していくと考えられます。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】広がりを見せるGX、革新的技術と企業の取り組み その1

最近、GX、グリーン・トランスフォーメーションという言葉を耳にするようになりました。すでに、DX(デジタルトランスフォーメーション)は日常の中で用いられていますが、GXはDXのデジタルの部分をグリーンに置き換えたもので、環境に関する技術を活用して、社会を変革していこうとするものです。

 2020年、菅首相は就任直後、2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにすると目標を掲げました。そして、12月には「グリーン成長戦略」を発表しています。また、米国ではバイデン政権が誕生し、環境重視に政策を転向しました。まさに、世界的にGX、環境問題解決への波が生じています。

 ただ、日本が目標の温暖化ガス排出ゼロを達成するには、現在、開発済みの技術だけでは不十分で、新たに革新的技術を開発する必要があります。具体的な分野を掲げると、①次世代蓄電池技術、②水素などがあります。

 ①次世代蓄電池技術は、自動車の温暖化ガス排出量を削減するためには欠かせない技術です。現在、電気自動車へのシフトが求められますが、いま普及している電池ではパワーに限界があるため、次世代蓄電池の開発が求められています。次世代蓄電池には種類がいくつかありますが、全固体電池が一つとしてあります。旧来、電池の多くは電解液(液体)が使用されているため、液漏れが難点になっています。その点、全固体電池は文字通り、液体を使用せず全て固体でできています。そのため、従来電池で問題となっている、液漏れを防げる点が高く評価されています。②水素も同様、温暖化ガスを排出しない燃料で、実用化が進んでいます。こうした新技術の開発により新たな市場が生まれます。GXを推進することでビジネスチャンスに繋がります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるオープンイノベーション その2

では、中小企業におけるオープンイノベーションに関連して、具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。以下で、中小企業庁編『中小企業白書2020年版』において地域活性化ファンドや異分野企業の技術・ネットワークを活用して製品開発や販売を行う事例として紹介された、株式会社Doog(本社:茨城県つくば市)の取組みについてみていきましょう。

 同社は2012年に創業・設立した移動ロボットの企画・設計・製造・販売を行う企業です。現社長は大学院を卒業後、大手電機メーカーにて移動ロボットの研究を担当した経験を経て同社を設立しました。
 現社長は人や物の移動が激しい業界で移動ロボットの技術を活用することで、人手不足を解消することができると考え、2015年9月に協働運搬ロボット「サウザー」を開発しました。「サウザー」は優れたロボット機能と機動力を有する運搬型ロボットで、人や台車に対する自動追従機能や無人での自動ライン走行機能を有しています。「サウザー」は荷台への機器の追加や形状のカスタマイズがしやすいように設計されており、同社では異なる分野との技術連携や販売連携を積極的に図っています。販売面では10社以上の販売パートナーとの連携を通じて、様々な業界への販路拡大に取組んでいます。2017年には「つくば地域活性化ファンド」の投資先に選定され、投資のほかにも、連携先の紹介など様々な支援を受けています。
 海外での導入実績も多く、シンガポールでの納品を契機に現地に子会社を設立し、ASEAN地域、欧州などへの販路拡大を目指しています。

 このように一緒に製品開発や販路拡大に取組むパートナーを見つけていくことで、更なる事業拡大が可能となるのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業におけるオープンイノベーション その1

中小企業においても外部の技術やノウハウを活用し、新製品・新技術・新サービスの開発などを実現するオープンイノベーションの重要性が指摘されています。
 中小企業庁編『中小企業白書2020年版』では、中小企業のオープンイノベーションの取組状況等についてアンケート調査を実施しています。
 同アンケートにおいてオープンイノベーションを、外部技術を自社内に取込み連携をする「アウトサイドイン型」、自社の技術・知識を社外に発信することで連携を促す「インサイドアウト型」、広く連携先を募り共同開発をしていく「多対多の連携型」に区分してその取組み状況をみると、「アウトサイドイン型」に取組む企業の割合は製造業、非製造業でそれぞれ19.0%、16.1%存在する一方で、「インサイドアウト型」は12.0%、8.4%、「多対多の連携型」は4.2%、4.5%にとどまっています。

 次に、オープンイノベーションの取組み効果についてみると、製造業、非製造業ともに、「知識・ノウハウの蓄積に効果があった」という回答割合がそれぞれ43.0%、45.6%と最も高くなっています。「特段の成果は上がっていない」と回答する企業は、製造業、非製造業ともに5%未満にとどまり、何らかの成果を得た企業が多いことがわかります。
 企業がオープンイノベーションを成功させるために重要と考えるポイントについてみると、製造業、非製造業ともに「連携企業との事前の信頼関係」、「明確なゴールの設定と共有」、「自社・連携先の意思決定スピードの早さ」の順に回答割合が高くなっています。

 このように中小企業におけるオープンイノベーション促進に向けては、連携企業との信頼関係構築などが重要となるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)