【時事解説】利益に対応した経営責任 その1

IFRS(国際会計基準)や米国会計基準の影響を受け、平成23年から日本でも上場企業に対して「包括利益」が導入されました。
 包括利益は経営者の経営責任概念について、従来の利益とは大きく異なっていることに注意しなければなりません。最終的には「経営者が負うべき経営責任とは何か」という経営哲学の問題に帰着します。

 包括利益は損益計算書の当期純利益を受けて計算され、事業成績の最終結果である当期純利益に投資有価証券の時価や為替換算調整勘定の変動金額等を加えて計算されます。
 現在の会計基準では、投資有価証券の評価損益や為替換算調整勘定の変動金額は損益計算書には表示されず、貸借対照表上で直接処理されています。この会計処理のポイントは評価損益が損益計算書を通りませんから(減損の場合を除く)、当期純利益が変動しないところにあります。ところが、包括利益はこれらの資産価格の変動による損益を含めたものを「利益」として提示します。

 経営者の成績は期間中にどれだけ利益を上げたかで評価されます。その意味で、損益計算書の最終利益が重要です。投資有価証券の評価損益や為替換算調整勘定の変動金額を損益計算書に含めない会計基準の背景には、経営者は本業での実績で評価してほしいという考え方があります。経営者からすれば、「株価や為替相場は経営者が関与できない外部変数で、経営者の能力とは関係ない。経営者の評価は本業への貢献度に絞って評価されるべきだ。株価下落や為替相場変動による赤字計上を理由に経営者に責任を取れと言うのは理不尽だろう。」と主張するのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【助成金補助金診断ナビ】新着助成金ニュース

【厚生労働省】
●平成30年度予算 厚生労働省 「時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)」
 長時間労働の見直しのため、時間外労働の抑制に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を支援する目的で助成金を支給します。

●平成30年度予算 厚生労働省 「人材確保等支援助成金Ⅱ(介護福祉機器助成コース)」
 介護労働者の身体的負担を軽減させるために、新たに介護福祉機器の導入に対して、労働環境の改善および従業員の離職率の低下を図る事業主を支援する目的に助成金を支給します。

●平成30年度予算 厚生労働省 「人材確保等支援助成金Ⅵ(設備改善等支援コース)」
 生産性向上に資する設備等への投資を通じて、雇用管理改善(賃金アップ等)と生産性向上を図った事業主を支援する目的に助成金が支給されます。

【経済産業省】
●平成29年度補正予算 経済産業省 「事業承継補助金(後継者承継支援型)」
 事業承継(事業再編、事業統合を除く)を契機として、経営革新や事業転換を行なう中小企業者に対して、その新たな取組に要する経費の一部を支援する目的で補助金を支給します。

●平成29年度補正予算 経済産業省 「省エネルギー設備の導入・運用改善による中小企業等の生産性革命促進事業」 2次公募
 民間団体等が行う省エネルギー性能の高い機器及び設備の導入と合わせて、エネルギー使用量等を系統的に整理、蓄積するために必要となる計測装置等の導入に要する経費の一部を補助する事業及び補助事業を行う者を対象とした省エネルギー設備導入後における省エネに関する専門家の派遣の実施に要する経費を補助支援する目的で補助金を支給します。

●平成30年度予算 経済産業省 「地域創造的起業補助金」
 新たな需要や雇用の創出等を促し、我が国経済を活性化させる、新たに創業する者に対して創業等に要する経費の一部を支援する目的で補助金を支給します。

上記に関する詳しい情報は、ゆりかご倶楽部「助成金補助金 診断ナビ」をご確認ください。
※上記以外の新着助成金情報もご確認いただけます。

《コラム》目標と管理者の見識

組織目標を設定する際、そこには管理者の意思が端的に表明されます。
 営業部門の場合で言えば、「適正な予算設定」が目標管理の「適正な組織目標設定」と同義で、管理者が市場環境と自社の販売ポテンシャルを的確に評価、判断する高い見識に基づいて設定されます、そのような予算・目標の実績との差異は、極めて小さく、経営貢献度が高いものとなります。

◆控え目な目標設定の問題と原因
 組織目標の設定は、管理者にとって「トップから与えられたノルマ」と映りがちで、また、達成度によって組織業績が評価されます。
 そこには管理者に「達成度が高く評価されるには、組織目標(予算)を控えめに設定する方が、得である」と言う意識が生まれる素地があります。
 このような管理者の意識は、一般社員の目標設定に伝搬し、組織業績低迷の原因となります。

◆組織目標のあるべき姿
 組織目標は過去の実績に比べて高く、ストレッチ(努力してようやく手が届く)な水準に設定し、その裏付けとして、市場環境の的確な分析と販売ポテンシャルに関する評価と自信がなければなりません。
 そのような目標は、実績との一致度が高くなり、同時に経営貢献度も高いものとなります。

◆経営者・管理者の留意点
 トップは「組織目標(予算)の達成度が高い」ことを、「未達」の時以上に警戒しなければなりません。
 そこに、「恣意的に設定された控え目な目標・表面的な高い業績評価を追い求める管理者の意識」が存在する可能性があるからです。
 トップと管理者は、そのような意識を排除し、組織目標(予算)を建設的行動の指標と考える高い見識を持たなければなりません。
 見識を高める裏付けとなるのは、次のような自らの実践的努力を通じた経営貢献度を高める組織風土の醸成にほかなりません。
 ・目標管理制度の運用(目標設定・目標達成努力・目標達成度と経営貢献度評価)を通じた組織別・組織間の目標達成努力。
 ・それらに関する真摯な反省と問題認識、トップ・管理者による改革・改善。

《コラム》官報の遡及日付け

◆法律を発効させる手続き
 内閣法制局のホームページには、法律案は、衆議院及び参議院の両議院で可決したとき法律として成立するが、その後、議院の議長から内閣を経由して天皇に奏上され、法律に御名御璽を得、次に法律に法律番号が付けられ、主任の国務大臣と内閣総理大臣の連署がされ、そうしてから、法律の公布の為の要件が揃ったことを確認する閣議決定を経て、官報に掲載されることにより、法律が法律として発効する手続きが完了することになる、と解説されています。

◆今年の改正税法の公布はいつ行われた?
 法律が現実に発効し、作用するためには、この公布が絶対に必要です。法律の公布がなければ、法律の効力を現実的に発動し、作用することになる「施行」はできません。
 ところで、平成30年度の改正税法の公布はいつ行われたのでしょうか。
 国立印刷局のホームページに「インターネット版官報」があります。そこには、官報は、行政機関の休日を除き毎日発行している旨記載されており、3月30日(金)には、国会事項のところに、改正税法は28日に可決し天皇に奏上している旨の記載があるだけで、改正税法そのものの掲載はありませんでした。3月30日の掲載には間に合わなかったようです。
 3月31日は土曜日です。4月1日は日曜日です。4月1日午前零時から施行するにはその前日に公布されていなければなりません。

◆「公布」とは、発行日の意味
 「公布」は、成立した法律を国民が知ることのできる状態に置くことをいい、最高裁判例は、官報販売所にて国民が読むことが可能な態勢になった時が公布の時だと、判示しているところです。
 官報販売所は土日は開かれていません。インターネット官報にて、改正税法を掲載した官報を読むことができるようにすることで、この「公布」と解してもよいのかも、と思い「公布」のタイミングを追いかけてみました。そうしたら、3月31日には、その「公布」はなく、4月1日にもありませんでした。目にすることが出来たのは、4月2日の午前零時を過ぎ、4月2日になってからでした。
 その上、その日付は3月31日でした。官報発行日の遡及日付けでした。かつてから、こういうことがあったのでしょうか。

 

《コラム》教育訓練給付金の拡充

◆教育訓練給付金はスキルアップの為の制度
 教育訓練給付金は雇用保険に加入している働く人が職業能力を高める費用の一部を補填される制度です。資格講座や専門学校の費用として受給できるものですが、いくらくらい支給されるのでしょうか。
 教育訓練給付金は語学やパソコンなど幅広い講座が対象の「一般教育訓練給付金」と看護師、社会福祉士等専門的な資格を目指す「専門実践教育訓練給付金」とがあります。専門実践教育訓練給付金は2018年1月から給付が10%上がり、費用の50%、年間40万円まで受給できるようになりました。支給期間は最長3年で、一旦自分で立替え、半年ごとに受け取ります。専門資格を取得すると費用の20%が上乗せされます。年間56万円が上限です。退職し、昼間の専門学校に通う45歳未満の方は雇用保険の基本手当が終了した後に受け取れる「教育訓練支援給付金」も50%から80%にアップされました。また、一般教育訓練給付金の給付率は費用の20%、10万円が上限で、受講終了日の翌日から1カ月以内にハローワークに申請します。

◆主婦や高齢者にも幅広く対象に
 65歳以上の高年齢者は2017年1月より現役世代と同じ教育訓練給付金の対象者となっています。所定労働時間が週20時間以上で31日以上雇用される見込みがあれば雇用保険に入る事ができるようになったからです。同じ会社で継続雇用され65歳になった人も65歳以上で再就職をした人も対象になります。
 また、2018年1月からは出産、育児、病気療養で雇用保険の受給延長をしていた人の延長期間は最長4年であったものが20年に延長されました。教育訓練給付金を受けられる人が会社を辞めて1年の間に妊娠、出産、育児で教育訓練が受けられず、その子供が現在18歳未満である時には受けられるようになりました。ですから極端に言うと1998年に退職した人も条件が合えば対象となるかもしれません。

◆給付金受給の手続き
 始めて給付金を受ける時には雇用保険の加入期間が専門実践教育訓練給付金は2年以上、一般教育訓練給付金は1年以上必要です。今働いているか、退職後1年以内の人が受給できます。2回目以降は加入期間が3年以上必要で申請にはハローワークに被保険者証を持参しましょう。

 

《コラム》平成30年度のキャリアアップ助成金

◆キャリアアップ助成金の拡充・新規内容
 キャリアアップ助成金は、非正規労働者の方の企業内でのキャリアアップを促進する為、正社員化等の取り組みを実施した事業主に対して助成金が支給される制度です。

●正社員化コース(拡充)……有期契約労働者等を正規雇用労働者に転換又は直接雇用した場合に助成されます。1年度1事業所当たりの支給申請人数の上限が15人から20人までになりました。追加要件として正規雇用等へ転換した際、転換前の6カ月と転換後の6カ月の賃金(賞与、通勤手当、時間外勤務手当、歩合給等は除く)を比較して5%以上増額している事が条件となります。また、有期契約労働者から転換の場合、対象労働者が転換前に同じ事業主に雇用されていた期間は3年以下に限ります。
 1人当たり57万円(生産性要件を満たした時72万円) の支給額変更はありません。

●人材育成コース(整理統合)……有期契約労働者等に一般職業訓練又は有期実習型訓練を実施した時に支給されます。このコースは人材開発支援助成金に統合されます。但し、平成30年3月31日までに訓練計画書の提出がなされている場合は従来の人材育成コースで支給申請できます。

●賃金規定等共通化コース(新規)……有期契約労働者等に正規雇用労働者と共通の賃金規定等を新たに規定、適用した場合に助成されます。この制度は助成額加算措置が新たに加えられました。1人2万円が上乗せされ生産性要件を満たした時は2万4,000円が上乗せされます。上限は20人までです。

●諸手当制度共通化コース(新規)……有期契約労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設け、適用した場合に助成されます。人数に応じた加算措置が加えられ2人目以降に適用、中小企業では1人当たり1万5,000円、生産性要件を満たした時1万8,000円、上限人数は20人までです。
 また、共通化した諸手当の数に応じて2つ目以降手当1つ当たり16万円、生産性要件を満たした時は19万2,000円です。
 既にキャリアアップ計画を提出していて当初の計画と異なるコースを利用するには事前に計画変更届を提出してください

【時事解説】太陽光発電2019年問題をビジネスチャンスに その2

太陽光住宅の2019年問題が控えています。2019年には余剰電力の買い取り保証期間が終了する家庭が多くあります。結果、余剰電力を売らずに、自家消費する動きが生じます。

 ただ、自家消費するにも別の課題が生じます。具体的には、電気は時間の経過とともに減衰する性質があります。晴れた日の昼間に発電し、後に雨天の夜間に使おうと思っても、創電した電気は消えてしまい、使えない可能性があります。そこで必要になるのが、創った電気をためておく蓄電池です。今、蓄電池メーカーは2019年に買い取り期間が終わる家庭を対象に蓄電池の販売に力を入れています。さらに、パワコンといって、太陽光発電した電気を家庭用コンセントでも利用できるように、直流電流を交流に変換する装置の開発を進める企業もあります。

 2019年問題は住宅関連だけでなく、自動車産業にとってもビジネスチャンスになります。電気自動車には蓄電池が搭載されており、電気をためる機能が備わっています。この特性に着目し、電気自動車と住宅との間で電気を融通できるシステムが発売されました。昼間消費しきれなかった電気は電気自動車の充電に当て蓄電し、住宅で電気が必要になった時は、電気自動車にためた電気を住宅に供給します。電気自動車に搭載されている蓄電池を利用することで、わざわざ新たに蓄電池を買わなくても、余剰電力を自家消費できるようになります。

 このほか、太陽光発電の新規参入者に対して、パネルの設置代金や総発電量の3割を無料で自家消費できるサービスを提供する企業もあります。このように、2019年問題に関しては、様々な企業がビジネスチャンスに変えています。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

【時事解説】太陽光発電2019年問題をビジネスチャンスに その1

地球温暖化対策の一つとして太陽光発電が注目を集めたことで、太陽光による創電を始める家庭が増えました。ところが、最近、太陽光住宅では2019年問題が心配されています。

 期限を間近に控える2019年問題とは何でしょうか。ことの発端は、2009年に始まった「太陽光発電の買取制度」にあります。これは、太陽光発電の普及を促すための施策で、個人が住宅で創電したうちの、余った電力(余剰電力)を電力会社が買い取るという制度です。ただ、買い取りの価格保証には期限があり、価格は1キロワット時48円で10年間買い取ると決まりました。

 2019年には、2009年の開始から10年が過ぎ、買い取り義務保証期間が終了する設備が多く出始めます。しかも、2019年以降の買い取り価格は、従来の48円から10円台と4分の1に下がるとみられています。結果、太陽光で発電した電力は売らずに全て自家消費したほうが良いと考える家庭が生じることが予想されます。また、太陽光発電の魅力が薄れ、新たに始めようとする人が少なくなることも予想されます。鳴り物入りで参入者が増えた太陽光発電事業ですが、2019年問題をきっかけに衰退してしまう可能性がささやかれています。

 ただ、2019年問題に対しては、皆が不安を漏らすだけではありません。企業の中には、問題を乗り切るために新たな製品やサービスを展開している会社が数多くあります。
 具体的には、電力の自家消費に関連した商品の開発や、太陽光発電を新規に始めやすくするサービスなど、2019年問題はむしろ太陽光発電事業にとってビジネスチャンスととらえ、取り組む姿が見受けられます。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

【時事解説】中小企業のBCP策定に向けた課題と支援策 その2

中小企業庁では、BCPの策定・運用に必要な考え方を、事例なども交えわかりやすく解説した支援ツールとして「中小企業BCP策定運用指針」を提供しています。同指針では中小企業のBCPの策定及び継続的な運用の具体的方法がわかりやすく説明されています。同指針は「入門・基本・中級・上級」という4つのコースに分かれており、策定者が自分のレベルに合わせてBCP策定に取り組むことが可能となっています。特に「入門コース」は、BCPを初めて検討する方のために、策定に最低限必要な項目に絞り、解説に従って様式に記入していくことでBCPが作成できるように工夫されています。
 また、中小企業庁からは、被災中小企業者のヒアリング結果と事業継続の検討に参考となるポイントを抽出した災害対応に関する事例集も公表されています。

 日本政策金融公庫では、「中小企業BCP策定運用指針」に則り、自ら策定したBCPに基づき防災に資する施設等を整備する際に対象となる特別貸付「社会環境対応施設整備資金」を提供しています。
 さらに、平成29年度予算では、BCP策定等の検討を行う中小企業の実態を把握しつつ、ワンストップで対応する経営支援体制の整備を図ることを目的とした「BCP関連の専門家等派遣事業」が行われています。具体的にはBCP策定に係る知識の不足により最初の一歩が踏み出せない中小企業に対してBCP関連の専門家等を派遣し専門的見地からの支援が行われています。
 このように中小企業のBCP策定に向けた意識の向上、スキル・ノウハウや人材の不足を補うために様々な取組みが行われているのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)

【時事解説】中小企業のBCP策定に向けた課題と支援策 その1

近年わが国では大地震、集中豪雨など従来の予想を超える規模の自然災害が多発しており、リスク管理の重要性が増しています。

 こうした中、中小企業において、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の策定が求められています。BCPとは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃等の緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、緊急時における事業継続のための方法、手段等を取り決めておく計画のことです。BCPを策定し運用することにより、危機対応能力の向上に加え、取引先との関係強化や、自社の経営実態の把握や経営管理の再確認によって企業価値の向上につながるというメリットがあります。

 しかしながら、「中小企業白書(2016年版)」によると、BCP策定を「策定済み」と回答した企業の割合は中小企業全体で15.5%である一方で、64.4%が「策定していない」と回答しており、中小企業においてはBCPの策定状況が低いのが実態です。また、従業員規模が小さな企業ほど「策定済み」と回答した企業の割合が低くなっています。BCPを策定していない企業にその理由を確認すると、「スキル・ノウハウ不足」、「自社では特に重要ではない」、「人手不足」が高い割合となっています。

 このように、経営資源に乏しい中小企業のBCP策定を促進するには、BCPを策定することのメリットや重要性を中小企業が認識するとともに、スキル・ノウハウや人材の不足を補うことができるような支援体制を強化することが求められるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)