《コラム》売却活動前の測量費

 相続した土地で駐車場を営む個人事業主が、土地活用の方針を決めるにあたり、隣地地権者と土地境界の測量を行い、その後、自身で活用する見込みがなくなり、当該土地の売却に転じた場合、測量費は譲渡所得の計算上譲渡費用を構成するでしょうか。

◆譲渡費用に該当するには
 所得税法では、譲渡費用の範囲を①資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用 ②借家人等を立ち退かせるための立退料、土地の上にある建物等の取壊費用、既に売買契約を締結したが更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除した際生じる違約金、その他譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用としています。
 売却方針決定前に支出した測量費が譲渡のため直接要した費用に該当するかは、例えば不動産仲介会社に土地売却の意思を伝え、媒介契約を締結して売却活動に入り、買主が見つかり売買契約の中で境界確定が条件とされ引渡しに至れば要件を充たすものと思われます。

◆取得費または維持管理費となるとき
 また譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持管理費用は、譲渡費用に含まれず、土地の測量費は各種所得金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、土地の取得費に算入するとされています。
 売却方針が定まらない場合には、測量費を取得費とするか、アパート賃貸への転用、駐車場の継続等を想定して隣地との紛争予防をはかるため不動産所得の必要経費(維持管理費)とすることが考えられます。

◆概算取得費に注意する
 相続で取得した土地を譲渡する際、土地の取得価額が不明であれば、概算取得費として土地譲渡代金の5%相当額を控除することができます。
 ただ、概算取得費を計上する場合、測量費など支出した取得費は、譲渡所得金額の計算上、控除できなくなりますので測量費を取得費とする場合は注意が必要です。
 確定申告期限までに売却方針が決まらないとき測量費を維持管理費か取得費とするかを含め状況に応じた判断が求められます。

【時事解説】Go To商店街について その2

では、「Go To商店街」では具体的にどのような取組みが行われているのでしょうか。そこで2020年10月に先行募集として採択された34件の商店街の一つで、Go To商店街事業者向けサイトの採択事例として紹介されている島根県松江市の「新たな地域商店街としての魅力創造と地域顧客の物品購入、来街に向けての後方支援の拡充」に関する取組みについてみていきましょう。

 この取組みは、JR松江駅の周辺にあり松江市の中心市街地に立地する協同組合松江天神町商店街、竪町商店街、松江駅本通り商店会の3つの商店街を事業実施主体とし、商店街の店舗数は計121店舗に上ります。
 これらの商店街の周辺は、市内でも特に多く高齢者が在住する地域であり、コロナ禍においても、地域住民が安心して気軽に買い物ができる環境を構築することが課題となっています。
 こうした中、Go To商店街事業として、「まちゼミのリモート配信や各店舗の魅力発信動画の制作」や「商店を主題にしたショートフィルムによる地域の魅力の発信」などといったオンラインによる商店街の魅力の継続的な発信、「ベロタクシーを中心としたデリバリーシステムの構築実験」や「トゥクトゥクを活用したショッピングバスの運行実験」などといった非接触を心がけたデリバリーや送客事業などに取組んでいます。
 これらの取組みを通して地域住民の安全や利便性を高めつつ商店街を楽しんでもらいながら、地域住民の商店街への愛着を育み常連客を増やしていくと同時に、域外の消費者の来街も促していくことが期待されています。

 このようにGo To商店街事業を契機として、新しい生活様式に対応した商店街へと変化していく取組みが行われているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】Go To商店街について その1

コロナ禍での商店街支援の一環として、2020年10月よりGo To商店街事業がスタートしました。
 同事業は、3密対策等の感染拡大防止対策を徹底しながら、商店街がイベント等を実施することにより、周辺地域で暮らす消費者や生産者等が「地元」や「商店街」の良さを再認識するきっかけとなる取組みを支援するものです。

 Go To商店街事業として実施するイベント等について、商店街等(商店街組織、商工団体、飲食店街など)は事業内容を提案する申請を行い、審査を経て採択された提案に基づくイベント等を実施するために必要な経費を国が支援します。対象となる事業は、消費者や生産者が地元や商店街の良さを再認識するきっかけとなるような商店街イベント等の実施(オンラインを活用したイベント実施も含む)や、地域の良さの再発見を促すような新たな商材の開発やプロモーションの制作などになります。

 同事業における新型コロナウイルス感染症対策として、イベントを実施する商店街等に対しては、①基本的対処方針(新型コロナウイルス感染症対策本部決定)等の遵守、②商店街ガイドライン・業種別ガイドライン等を踏まえた感染防止対策の徹底、③参加者へのチラシやポスター掲示等を通じた感染防止対策の周知徹底などが義務付けられます。同事業については、2020年12月18日現在で、全国1,434件の申請に対し532件の事業が採択されています。

 このように、Go To商店街事業を通して商店街が感染症対策を取りながら、地元の良さの発信や、地域社会の価値を見直すきっかけとなる取組みを行い、地域に活気を取戻していくことが期待されているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》課税される助成金と計上時期

 新型コロナウイルスの影響により様々な助成金等を受け取る機会がありました。それぞれの課税上の取り扱いを整理します。
◆非課税とされる助成金等
 以下の助成金は所得税の非課税として取り扱われます。
・特別定額給付金
・子育て世代への臨時特別給付金
・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
・学生支援緊急給付金
・低所得ひとり親世帯への臨時特別給付金
・新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
・企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の割引券及び助成

◆課税される助成金とその計上時期
 以下の助成金は課税され、原則的には支給の決定した時(権利の確定時)に収入を計上します。給与や家賃など特定の経費を補填する性格の助成金は、基本通達の取扱に準じて、必要な手続きをしているときはその経費の発生年度に計上することとなります。また、Go Toキャンペーンによる給付金やポイントは、そのサービスを受けたときやポイントの使用時に収入計上します。
(1)支給決定時に計上するもの
・持続化給付金
・地方自治体の感染拡大防止協力金
 持続化給付金については、①令和2年12月に申請したが支給決定の通知が来ていないもの、②令和3年に申請を行ったものは令和3年以後の収入となります。
(2)支給決定時又は経費発生時に計上するもの
・雇用調整助成金
・小学校休業対応助成金
・家賃支援給付金
・小規模事業者持続化補助金
・経営継続補助金(農林漁業者向け)
・感染拡大防止等支援事業の補助金(医療機関等向け)
(3)ポイント・クーポン使用時に計上するもの
・Go To トラベル事業の給付金
・Go To イート事業の給付金
・Go To イベント事業の給付金

《コラム》テレワークの労務管理上の課題

◆テレワークを実施している割合は?
 内閣府が2020年6月に公表した調査によると、全国でテレワークを経験した人の割合は34.6%でした。テレワークは以前からありますが、コロナ禍でより身近な働き方になったと感じる人も多いのではないでしょうか? 調査ではテレワークの導入率が「ほぼ100%」は全体の10.5%、感染者の多い東京23区では20%以上という高い割合です。「50%以上」の働き方も11%と約1割あります。東京都では昨年12月の実施率が15.7%であったものが、2020年4月では49.1%が実施、2.5倍に増えています。実施が多い業種は、1.教育・学習支援、2.金融、保険、不動産業、3.卸売業、4.製造業です。
 テレワークの実施率は業種別、雇用形態別、地域別で大きく異なっています。

◆労務管理上の課題
 テレワークを実施していない企業から上がってくる意見は「適した業務がない」「セキュリティー上のリスク」「インフラ整備の問題」などがあります。他には次に上げるような意見もありました。
(1)「部下が本当に集中して働いているか」
 不安に感じる上司の一方で働く側は「サボっているとは思われたくない、業務に集中するあまり長時間労働となってしまう」という回答もあります。一部に多少サボっている人がいるとしても、テレワーク中の全員を監視するようなことは働く意欲をなくしてしまいます。会社と社員で認識を統一して、制度がきちんと運営される土台を作ることが大切です。
(2)労働時間の把握が難しい
 在宅勤務中にも出社時と同じ労働時間管理をしている企業は8割ありますが、電話、メールで始業・終業に連絡、クラウド上の勤怠システム、パソコンのログ、日報などの報告があります。本人の都合で時間をずらして働くときは事前・事後に申請させるなどして実態を把握しましょう。
(3)コミュニケーションがとりにくい
 コミュニケーション手段は主にメール、チャット、WEB会議、電話等になりますが、対面よりは簡潔な表現にならざるを得ないので情報共有漏れが出ないともかぎりません。在宅勤務は孤独感や相談相手がいない等、精神面でのフォローも必要不可欠です。

《コラム》法改正情報!子の看護休暇・介護休暇の時間取得

◆「子の看護休暇」とは
 子供の急な発熱や体調不良、けが等は心配なものです。育児と仕事を両立する労働者にとっては、看病のために仕事を休む必要がある場合もありますね。
 そのような時に取得できる休暇として、育児介護休業法による「子の看護休暇」があります。
 これは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が、病気、けがをした子の看護、または子に予防接種、健康診断を受けさせるために、1年に5日(子が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇のことです。

◆改正法で時間単位での取得が可能に
 これまで、子の看護休暇は「1日」もしくは「半日」の単位で取得可能であり、そもそも労働時間の短い労働者(1日の予定労働時間が4時間以下の者)は半日単位での取得対象外とされていました。
 これだと、予防接種や軽度の病気である場合、数時間程度の休暇で事足りるのに、必要以上に休暇を取ることになり使い勝手が良くないという声がありました。
 この点、令和3年1月1日から、この休暇をより柔軟に取得できるよう法改正がなされ、時間単位での取得ができることになります。

◆介護休暇も同様に対象となる
 同じ育児・介護休業法で定める「介護休暇」は、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者が、1年に5日(対象家族が2人以上の場合は10日)まで取得できる休暇のことです。こちらも、今回の改正で時間単位での取得が可能となります。

◆事業主は規定の見直しを!
 法改正に伴い、育児介護休業規定の見直しが必要です。更に、法の求めを上回り、労働者により配慮した措置として、始業・就業時間に連続しない「中抜け」を認める制度とするかの検討が必要です。
 また時間単位の取得により、勤怠管理に影響が出る点も注意してください。

◆両立支援等助成金について
 時間単位で利用できる有給の、子の看護休暇や介護休暇を導入し、休暇を取得した労働者がいる等、一定の要件を満たした事業主は、国からの両立支援等助成金の支給対象となりますので、対象となるか確認してみましょう。

 

【時事解説】余剰資金の使い道から考える会社観の違い その2

しかし、我が国では会社を株主のものと単純には割り切れません。会社は確かに株主が作った組織ですが、その後の運営は役員や従業員が主体となります。会社が上げた利益は、従業員が力を合わせ皆で稼いだものと考えますから、株主というより従業員のために使うべきではないかという思想も捨て切れません。

 欧米的には、株式会社はある特定の事業を行い、利益をあげることを目的に作ったものですから、その事業が時流に合わなくなれば、新陳代謝があるのはやむを得ないと考えます。従業員もそれに応じて職場を変わるものとして、雇用の流動化に慣れています。とすれば、会社の存続のために自己資本比率を闇雲に高くする必要はなく、余剰資金の株主分配も当然と考えます。

 しかし、日本の従業員にとっては、会社は単なる給与をもらう場所というに止まらず、精神的なよりどころといった側面も併せ持ちます。また、雇用の流動化も進んでおらず、普通の従業員は会社を変えることは相当な苦痛を伴いますから、どんな形であれ、会社にはできるだけ存続してもらいたいと思っています。社会のセーフティネットの一部を会社が担っているという見方もできます。とすれば、会社存続の社会的要請が強くなり、いたずらな株主還元の増加に慎重にならざるを得ません。

 大手上場企業ではグローバルスタンダードで株主還元が重視される傾向にありますが、その考え方が一般的な上場企業にまでに広がっているとはいえません。今後、成熟経済に入り、再投資は益々難しくなりますから、余剰資金の使い方は上場企業にとり大きな課題であり続けると思います。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】余剰資金の使い道から考える会社観の違い その1

日本企業には内部留保が大きく積み上がっており、その使い道が問われています。資金の用途として最も望ましいのは、将来の成長のための設備投資です。しかし、少子高齢化で人口減少が進み、潜在成長率が下がっている我が国で、企業の成長に資する投資がそう簡単に見つかるものではありません。投資機会がないまま、利益が上がり続ければ、内部留保と現金が積み上がります。その結果、常に株主価値の上昇を求められる上場企業では、余剰資金の使い方が大きな課題となります。

 欧米であれば、答えは明快で、配当や自社株買いなどの株主還元に使うべきということになります。しかし、日本ではそのように簡単に割り切ることできません。そこには欧米とは異なる会社観の存在が背景にあるように思います。

 会社観とは突き詰めれば、「会社は誰のものか」ということに行き着きます。答えは、株主と従業員の二つに大きく分けられます。

 株式会社論的に言えば、株式会社は株主が自らの利益をあげるために作った組織です。従業員はそのために雇われているに過ぎませんから、従業員が前面に出てくることはありません。会社の余剰資金を再投資して会社が成長し、株主価値が増加するなら、再投資することに株主に異存はありません。一方、余剰資金を会社内で使い切れなくなれば、株主に返還するのが筋です。配当や自社株買いを行えば、自己資本が減少しますから、株主が最も重視するROE(自己資本利益率=当期純利益÷自己資本)が増加します。自己資本比率が高く、現金預金が豊富な会社がたどりつく当然な選択になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》特例措置は2021年2月末まで雇用調整助成金

◆雇用調整助成金特例措置終了予定
 新型コロナウイルス感染症に係る雇用調整助成金の特例措置として、令和3年2月末まで日額上限額の引き上げ等が行われていますが、3月以降段階的に縮小し、5~6月にリーマンショック時並みの特例とする方針が12月8日に総合経済対策で表明されています。そして令和3年1月末及び3月末時点の感染状況や雇用情勢が大きく悪化している場合、感染が拡大している地域、特に業況が厳しい企業について特例を設ける等、柔軟に対応するとされています。

◆3月以降はどのようになる?
 雇用調整助成金の特例措置がなくなるとどのようになるでしょうか? リーマンショック時の主な特例措置を参考に出しますと次のようになっていました。
①助成率:中小企業4/5、大企業2/3(コロナ特例措置では雇用を維持している場合、中小企業10/10、大企業3/4)
②生産指標要件:最近3か月の生産量等が直前3か月又は前年同期と比べて原則5%以上減少(コロナ特例措置では1か月5%以上減少)
③対象被保険者:雇用保険被保険者6か月未満の者も助成(コロナ特例では緊急雇用安定助成金により被保険者でない労働者も助成)
④支給限度日数:3年300日(コロナ特例措置では令和2年4月1日から令和3年2月末までの期間+1年100日、3年150日)

◆在籍型出向による雇用維持支援にシフト
 今後は産業雇用安定助成金(仮称)を創設し出向元と出向先の双方を支援、出向元には雇用調整助成金、出向先には労働移動支援助成金による受け入れ企業への支援の方向になるでしょう。
 また、人手不足企業にはコロナ禍による離職者等で就業経験のない職業に就くことを希望する求職者を一定期間試行雇用する事業主に対する賃金助成制度(トライアル雇用助成金)を創設、紹介予定派遣を通じた正社員化(キャリアアップ助成金)の促進なども予定されています。
 雇用調整助成金の特例措置を使っている企業は期間延長が終了したときの変更の対応を検討する必要があるでしょう。

【時事解説】スマートシティーで生活はどのように変わるか その2

スマートシティーの実証実験が進んでいます。スマートシティーとは、ITや環境技術などの先端技術を駆使した街づくりを指します。国内でスマートシティー関連事業に取り組む地域は現在160ほどあります。

 福島県会津若松市を例に挙げると、同市では様々な実証実験が進められています。観光名所の鶴ヶ城では、新型コロナウイルス感染症対策のため密集回避システムが稼働しています。これは、AIを搭載した3Dカメラが人の動きを感知。人との間隔が1.5メートル以内になると赤色で表示されます。結果、人との距離を保ち、密を避けることができます。

 こうしたビジネスチャンスは国内にとどまらず、輸出での利益にも期待が寄せられています。背景には、政府がインフラ輸出に関する新たな戦略を明らかにしたことがあります。従来、インフラの輸出といえば、道路や鉄道といった「重厚長大」が中心でした。が、今後は、ESG(環境・社会・企業統治)分野に重点が置かれるようになります。スマートシティーは環境技術を駆使するため、輸出の強化が掲げられています。

 現在、ベトナムの首都ハノイやミャンマーの都市マンダレー、インドなど、東南アジアでは多くの都市がスマートシティー建設を決定しています。1都市のインフラ開発事業に参加するだけでも数百億円規模のビジネスになるともいわれています。これらビジネスチャンスを得るため、政府は日本企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)で手がけるスマートシティー事業を後押しする姿勢でいます。

 競合する中国や韓国にどこまで対抗できるか。スマートシティー事業が日本に大きな利益をもたらすことに期待したいところです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)