【時事解説】スマートシティーで生活はどのように変わるか その1

スマートシティーの実証実験が進んでいます。スマートシティーとは、ITや環境技術などの先端技術を駆使した次世代の街を指します。技術で都市機能や暮らしを向上させることが目的です。サービスは多岐に渡りますが、交通分野ならば、車の走行データなどのビッグデータを活用し、渋滞の緩和や物流の効率化といったことが挙げられます。

 国内には「スマートシティー構想」を掲げ関連事業に取り組む地域や本格事業化を進める企業が多数あります。行政のデジタル化の機運が高まる中、街づくりにもその波が押し寄せているともいえます。
 渋谷エリアではアプリサービス「shibuya good pass」の実証実験が始まりました。これは、渋谷区の在住者や渋谷エリアで働く人を対象としたアプリです。ユーザーは月額基本料を支払うと、連携する都市サービスを利用できるというものです。

 当初用意されるサービスは、約10ジャンルあります。一例を挙げると、小型車やマイクロバスを使った月額乗り放題のサービスがあります。利用者はスマートフォンから車を呼び出します。すると、AIが最適ルートを導き出し、近くを走る車両を配車します。家から2キロメートル先の店で食事がしたい。そんな時、アプリを利用すれば軽自動車などが家の近くまで迎えにきてくれます。月額乗り放題なので、タクシーのようにメーターを気にすることもありません。このほかにも、月額オフィス会員サービスや再生可能エネルギーの提供、都市農園など、多岐に渡るサービスが用意されています。こうしたサービスをまず渋谷で実装し、その後は国内の複数の都市に展開することでさらに収益を上げていくことが可能になります。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》地積規模大の宅地の評価

◆広大地補正率から規模格差補正率に
 「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」に変わり、2年以上が経過しました。変更時は、大きな話題となり、専門誌にも何度も採り上げられましたが、再度、復習してみたいと思います。

◆制度の趣旨は開発分譲だけではない
 大規模な土地を戸建住宅用地として開発分譲する場合に、主に面積が大きいことにより、道路や公園などの公共的用地の負担が生じるため、路線価に面積を乗ずるだけでは、過大評価になってしまいます。
 そういう不合理評価の是正も規模格差補正率の趣旨の中にありますが、開発行為は必ずしも前提になってはいません。

◆マンション1室所有でも適用可
 マンションやオフィスビルといった区分所有建物の1室、1区画を所有している場合においても、そのマンション等の敷地全体で地積要件ほかを判定して要件充足なら適用になります。
 そのマンション1室に係る敷地が小規模宅地特例の「特定居住用宅地等」に該当すれば、規模格差補正率の要件はマンションの敷地全体で判定し、小規模宅地特例の限度面積は所有マンション1室に対する敷地面積で判定します。

◆倍率地域、市街地農地・山林・原野にも
 「地積規模の大きな宅地」の要件に該当するのであれば、倍率方式により評価する地域、市街化区域内に存する市街地農地、市街地山林、市街地原野などであっても、規模格差補正率の適用はあります。
 これらの場合の計算としては、近傍の固定資産税路線価㎡単価に倍率を乗じ、奥行価格補正率、規模格差補正率等を面積に乗じて算出します。この金額が、倍率評価額よりも低い金額の場合に適用となります。

◆規模格差補正率の適用要件
 土地面積が1000㎡(三大都市圏の場合500㎡)以上で、対象外地域(市街化調整区域・工業専用地域・大規模工場用地)ではなく、指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)未満の宅地であることが、適用要件です。
 規模格差補正率は、路線価に、奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率を乗じて求めた金額に乗じますが、面積が増えるに応じて80%から64%の評価額に順次逓減していくように率が調整されています。

【時事解説】地域おこし協力隊による事業引継ぎについて その2

では、地域おこし協力隊による事業引継ぎを活用した取組みとしては具体的にどのようなものがあるのでしょうか。そこで「後継者マッチング支援事業」の取組みを推進している島根県浜田市の事例についてみていきましょう。

 浜田市が2017年に実施した「事業承継に関するアンケート調査」によると、同市における60歳代以上の経営者の割合が68.6%を占め、「自分の代で清算・廃業するつもりと回答した企業」は42.2%に上っており、後継者不在による廃業の問題を抱えています。

 こうした状況を踏まえ、意欲溢れる人材を積極的に受け入れ、地域に蓄積されたノウハウや技術といった企業価値を次世代に受け継ぎ地域経済の活性化を図るため、後継者不在の市内事業所の事業引継ぎを目的とした地域おこし協力隊員を募集しています。隊員の活動は、市内事業所の後継候補者として事業承継(市内事業所の事業を譲り受けた起業も含む)を行うこととされ、2019年度に2名の募集が行われました。

 活動内容としては、委嘱日から最大1年6ヶ月間を「後継者マッチング期間」として位置づけ、この期間に商工団体の補助的な業務に従事しながら事業承継の知識や地域の実情について学びつつ、後継者不在の事業所と積極的にコミュニケーションを図り、後継候補者として研修する事業所を決定していきます。

 研修先事業所の決定以降は「研修期間」として位置づけ、研修生として後継者不在の事業所に従事しつつ「事業承継計画書」を作成していきます。

 このように、地域おこし協力隊のスキームを活用して後継者不在の中小企業の事業承継を推進していくことが期待されているのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】地域おこし協力隊による事業引継ぎについて その1

 経済産業省と総務省は、後継者不在の中小企業・小規模事業者と事業の引継ぎを希望する者のマッチングを促進するため、国が各都道府県に設置している事業引継ぎ支援センターが運営する後継者人材バンクと、総務省の「地域おこし協力隊」との連携を行っています。

 中小企業庁では、後継者不在事業者の事業承継を支援するため、2011年度より中小企業のM&Aの相談や助言を行う事業引継ぎ支援事業を開始し、2016年度までに事業引継ぎ支援センターを全国47都道府県に設置しています。事業引継ぎ支援センターでは後継者不在の中小企業・小規模事業者と譲受を希望する事業者とのマッチングを行っています。

 地域おこし協力隊とは、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を指し、地方公共団体が委嘱します。隊員は一定期間地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を進めていきます。

 地域おこし協力隊の事業承継支援への活用に向けて、2018年6月より経済産業省と総務省との間で連携を開始し、静岡県で開催されたキックオフイベントを皮切りに、事業承継に興味がある「地域おこし協力隊」と後継者不在に悩む中小企業・小規模事業者とのマッチング支援が行われるようになりました。

 こうした連携の取組みを経て都市部から地方に来た地域おこし協力隊員が、事業引継ぎ支援センターの支援を得つつ、地域で事業展開を図る後継者不在の事業を引継ぐというケースも出てきているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

《コラム》従業員の雇用を守る「雇用シェア」制度

◆無料の出向マッチングで雇用維持
 新型コロナウイルス感染症の影響により、一時的に雇用過剰となった企業が「感染症の影響で従業員の仕事がない。雇用を維持するために一時的に他社で働いてほしい」と思っても提携先を自社で探すのは難しいですね。一方で「感染症の影響で人手不足が加速している。人員の確保が急務」な企業もあります。雇用過剰と人手不足の企業との間で「雇用シェア」ができたら失業せず労働移動ができますね。
 そのような時は、公益財団法人 産業雇用安定センターの「在籍型出向制度」を活用することができます。企業間を取り持つ産業雇用安定センターは企業間の出向や移籍の支援マッチングを無料で行っています。
 例えば送出ニーズの高い業界団体(感染症の影響により雇用維持に苦慮する業界)、
ホテル・旅館業・観光バス・飲食店・アパレル・雑貨小売店・食品製造業等から、受け入れニーズの高い業界団体(感染症の影響により人手不足が生じている業界)、陸上貨物運送業、スーパーマーケット、ホームセンター、IT企業、倉庫業等に人材を送り、双方のメリットを生かします。

◆雇用シェアを活用し助成金が使えることも
 雇用調整助成金の対象の「出向」とは、
①雇用調整を目的とする出向……経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用の維持を図ることを目的に行う出向
②雇用維持を図るための助成……出向後は元の事業所に戻って働くことを予定していることが前提

◆出向の場合の助成額
 出向元が出向労働者の賃金の一部を負担する場合、以下のいずれか低い額に助成率(中小企業3分の2)を乗じた額
イ、出向元の出向労働者の賃金に対する負担額
ロ、出向前の通常賃金の2分の1
ハ、8370円×330/365×対象日数上限
 出向元と出向先の間で出向期間、処遇、賃金負担割合等取り決めを行い、出向労働者には出向前に支払っていた賃金と両方合わせて概ね同額を支払うことが必要です。

《コラム》サラリーマンの副業・兼業促進ガイドラインのチェックポイント

◆副業解禁の波はまだ緩やか
 総務省の調査によると副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にあります。その理由は、収入を増やしたい、1つの仕事だけでは生活できない等の経済的なことから、自分が活躍できる場や様々な分野の人脈を広げたい、スキルアップのため等、多様です。
 しかし、2014年の調査では、国内の80パーセント以上の企業が、社員の副業・兼業を認めていなかったようです。
 企業にとっては、自社での業務が疎かになること、情報漏洩のリスクがあること、競業・利益相反になること等の懸念や、副業・兼業に係る就業時間や健康管理の取扱いのルールが分かりにくい等の様々なハードルがあるために、制度の導入には慎重にならざるを得ない様子が伺えます。

◆「働き方改革」で副業・兼業を推進の動き
 政府は現在、起業の手段として有効で、地方創生に資する面があり、社会全体としての利益に繋がることが期待できる副業・兼業を、普及促進する方針をとっています。
 そこで、企業にとっての課題を踏まえ、現行の法令のもとでどのような事項に留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を示しています。

◆ガイドライン改定でルールがより詳しく
 令和2年9月、本ガイドラインが改定され、労働時間の通算安全配慮義務、秘密保持義務、競業避止義務、誠実義務等についての記述が新設されています。
 注目すべきは、労働時間の通算管理に関する事項です。長時間労働や健康被害を防ぐため、企業は労働者からの自己申告により副業で働いた時間を把握し、本業と副業労働時間を通算して労務管理を行うとしています。
 また労働時間管理については、簡便な方法として「管理モデル」が示されており、このモデルに従えば、使用者は副業・兼業をしている社員をあらかじめ設定した労働時間の範囲内で労働させる限り、副業先の使用者の下での労働時間を把握しなくても、労基法を遵守することが可能となります。
 国の指針や裁判例からみても、時代の流れは、副業・兼業を企業が認める方向に向かいそうです。ニューノーマルが求められる時代です。ガイドラインを見てみるのもよいでしょう。

《コラム》法定相続情報証明制度

◆法定相続情報証明制度とは
 相続人が法務局に対して、戸籍謄本等の必要書類及び相続関係を記載した一覧図を提出することにより、登記官がその内容を確認し、認証文付の一覧図の写しを交付する制度です。
 平成29年5月29日から全国の法務局でスタートした比較的新しい制度です。

◆なぜ、この制度が必要となったのか?
 相続登記や預貯金の解約などの相続手続において必要となる書類は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等の多くの戸籍関係書類が必要となります。これらを手続ごとに提出し、何度も同じ書類を集めなければなりませんでした。
 この法定相続情報証明制度がスタートしたことにより、登記官が内容を確認して交付された認証文付きの一覧図の写しを提出することにより法定相続人が一目瞭然となるため、相続人及び提出先の担当部署の負担が相当軽減されることとなりました。

◆必要書類
 夫、妻、長男、長女という家族で夫が死亡した場合の必要書類を記載していきます。
① 夫の出生から死亡までの戸籍謄本
② 妻、長男、長女の戸籍謄本
③ 夫の住民票の除票又は戸籍の附票
 ①~③の書類を収集し、申出書を作成し管轄法務局に提出します。
 法定相続情報一覧図に妻、長男、長女の住所を記載して欲しい場合には、上記①~③に加えて妻、長男、長女の住民票を提出します。

◆最後に
 相続手続における戸籍関係書類の収集を1回にし、法務局に提出することにより戸籍関係書類に代わる法定相続情報一覧図を交付してもらい、相続人の戸籍収集の負担を軽減し、提出先(銀行等の金融機関)の担当部署の戸籍謄本等の解読が不要となり法定相続情報一覧図によって明らかになるということです。
 相続人にもメリットですし、提出先にもメリットともなるので積極的に利用していきたい制度です。

【時事解説】VUCA時代のリーダーシップとは その2

コロナ禍では世界が一変し、新たな常識が生まれました。そんな先の見えない今、「VUCA(ブーカ)」というキーワードが注目されています。これは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(多義性)」の頭文字を連結した言葉です。

 VUCAの時代に適したリーダーシップのスタイルとはどのようなものでしょうか。ハーバード・ビジネススクールのリンダ・ヒル教授が提唱する「羊飼い型リーダーシップ」はVUCAの時代に適したリーダーシップの姿だと言えます。

 具体的な特徴を説明しましょう。羊は羊毛や食肉として用いられます。羊を飼育する際、羊飼いは群れを野原に連れ、草を食べさせなければなりません。ときには、オオカミなどの敵から羊を守り、あるいは迷子になったものがいれば探して群れに戻すことが必要になります。

 羊飼いは群れの最後方に位置するのが特徴です。先頭は別の人が立つ形をとります。たとえば、移動の際、橋がかかっていない川に直面したなら、橋を架けることを得意とする人が先頭をとります。新規の野原に向かうときは、道に詳しい人が先頭に変わります。時には、牧羊犬を走らせ、羊を目的地に誘導するときもあります。このように、状況次第で先頭が次々と変わっていきます。

 リーダーが先頭に立っていると、前はよく見えますが、自分よりも後方に位置する景色は見えにくいものです。環境の変化をいち早く察知し、状況を的確に把握したうえで場面に適した人材を据えるには、リーダーは後方にいたほうが都合がよいのです。このように、VUCAの時代では、必要とされる能力も変わります。何が重要なのか、意識をしながら、対応していくことが必要です。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】VUCA時代のリーダーシップとは その1

最近、「VUCA(ブーカ)」というキーワードが注目されています。これは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(多義性)」の頭文字を連結した言葉です。もともとは軍事用語として用いられていました。この言葉が生まれた背景には、アルカイダのような非国家が前面に出たことで、過去の常識は通用しなくなったことが一つとしてあります。その後、世の中は落ち着きを取り戻したものの、コロナ禍で再び不確実性が高まり、VUCAが注目されたのです。

 コロナ禍では常識が覆され、世界が一変しました。先の見えない現在、まさにVUCAの時代です。VUCAの時代では、これまでの基準が変わり、良いとされていたものが必ずしも良いとは限らなくなっています。

 一例を挙げると、リーダーシップのあるべき姿がそうです。従来、リーダーシップというと、カリスマ性を備え、先頭に立って部下を率いるタイプがもてはやされる傾向がありました。ただ、VUCAの時代では、変動性や不確実性が高くなったため、リーダーの要素としては、いかに迅速に変化へ対応できるかといった能力がより重要になっています。

 具体的に、どのようなリーダーが変化に対応しやすいのでしょうか。一つに、「羊飼い型リーダーシップ」があります。これは、ハーバード・ビジネススクールのリンダ・ヒル教授が提唱したリーダーのあるべき姿です。「羊飼い型」と銘打たれているように、リーダーは群れの後方に位置して、全体をつかさどります。後方にいる方が、全体がよく眺められ、変化への対応が迅速になります。これまでとは全く異なるリーダーのスタイルが危機を救うには適しているのです。(つづく)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)

【時事解説】中小企業成長促進法について その2

2020年10月1日に中小企業成長促進法が施行されたことに伴い、中小企業目線での政策体系の整理が行われています。以下でその概要についてみていきましょう。

 中小企業の計画支援のスキームは、成長段階に応じた体系に簡素化されました。まず、基礎体力をつける段階の計画としては、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」が位置づけられています。これは経営資源の有効活用により、経営の向上を図るものです。

 次に新分野進出を目指す段階の計画としては、中小企業等経営強化法に基づく「経営革新計画」が位置づけられています。これは新事業活動により経営の相当程度の向上を図るものです。新事業活動の定義に研究開発等が明示されるなど経営革新計画の定義見直しが行われたことを受けて、特定ものづくり基盤技術に関する研究開発等を行う特定研究開発等計画や、事業分野が異なる事業者の連携により新事業分野の開拓を行う異分野連携新事業分野開拓計画は廃止となり、経営革新計画への支援措置に包含されることとなりました。

 さらに地域全体の活力向上を目指す段階の計画としては、地域未来投資促進法に基づく「地域経済牽引事業計画」が位置づけられています。これは産業集積、観光資源、特産物など「地域の特性」を活かして、地域に対して相当の経済的効果を及ぼすものです。今回の政策体系の整理を受けて、地域の特産物など「地域資源」を活かして、新商品やサービスの開発・生産を行う地域産業資源活用事業計画は廃止となり、「地域経済牽引事業計画」による支援措置に包含されることとなりました。

 このように、類似の計画制度を統合し、中小企業の成長段階に応じた体系に簡素化されたのです。(了)

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)