《コラム》消費税改正に向けた次世代住宅ポイント制度とは?

◆消費税率引上げに対しての政策
 消費税率の引上げが行われると、引上げ前の駆け込み需要の後、需要は大きく低下します。この需要変動に対して、特に「内需の柱」と位置付けられている住宅関連投資の反動減を少しでも軽減させようと、消費税率10%の際には住宅ローン控除等の既存制度に加えて、ポイント制度を新設しました。それが「次世代住宅ポイント制度」です。対象となる建物は2019年10月1日以降に引渡しを行うもので、ポイント申請受付は工事請負契約後から申請できるため、2019年6月3日開始予定です。

◆内容は、商品が貰えるポイント制度
 次世代住宅ポイント制度は、住宅の新築・住宅のリフォームにおいて、エコ住宅や耐震住宅・バリアフリー住宅等、「省エネ・環境」、「安全・安心」、「健康長寿・高齢者対応」、「子育て支援、働き方改革」に資する住宅・工事内容である場合、その内容に応じてポイントがもらえるものです。
 新築の上限は1戸当たり35万ポイント、リフォームの場合は30万ポイントとなりますが、若者・子育て世帯がリフォームを行った場合は上限45万ポイント、既存住宅を購入し、リフォームを行う場合は、各リフォームのポイントを2倍カウントします。
 貰ったポイントはカタログサイトから「省エネ・環境」、「防災」、「健康」、「家事負担」、「子育て」、「地域振興」のカテゴリに該当する商品と交換ができます。なお、現在交換商品を募っており、出品業者としては通信販売の実績等の制約はありますが、申請が通ればポイント事務局の商品一覧に掲載してくれるようです。該当するジャンルが幅広いので、該当する商品を取り扱っている企業も多いはずです。一度検討してみてもいいかもしれません。

◆ふるさと納税との兼ね合いも
 ポイント商品の要件を見てみると「地域の振興」に資する商品については追加要件に「H31年度のふるさと納税の返礼品として紹介されていること」とあります。ふるさと納税は今年6月からお礼の品に関して規制が入ります。ふるさと納税と併せて次世代住宅ポイントでも地場産品については利用可能としたことで、地方自治体への「アメとムチ」の「アメ」の部分として役割を持たせようとしたのでしょうか?

(後編)金の密輸入に対し消費税の仕入税額控除制度を見直し!

(前編からのつづき)

 消費税率が8%に引き上げられた2014年から、摘発件数、押収量ともに急増しており、輸入時には税関で消費税が課税されますが、密輸して消費税を免れて、国内で売りますと消費税分が儲けとなるため、消費税率が高くなればなるほど密輸による儲けも大きくなることが増加の背景にあるとみられております。

 2018年度税制改正において、消費税法を改正し、輸入に係る消費税の脱税に係る罰金額の上限を脱税額の10倍が1,000万円を超える場合には、脱税額の10倍に引き上げたものの、金の密輸入はいまだ高水準にあります。
 密輸の仕出地別にみてみますと、2018年は「香港」が332件、「韓国」が319件、「中国」が224件の順に摘発件数が多い結果となりました。
 大規模空港のみならず、地方の海港・空港(清水港、宮崎空港等)でも摘発があり、摘発が全国にまたがっていることから、金密輸入に対しては、全国の税関で取締りを強化し、厳正に対処しております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年4月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)金の密輸入に対し消費税の仕入税額控除制度を見直し!

2019年10月には消費税率10%への引上げが予定されており、金の密輸入のさらなる増加が想定されることから、2019年度税制改正において、消費税における仕入税額控除制度の見直しを行います。
 具体的には、
①密輸品と知りながら行った課税仕入れについて、仕入税額控除制度の適用を認めない(2019年4月以後適用)こと
②金又は白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の写しの保存を仕入税額控除の要件に加える(2019年10月以後適用)としました。

 財務省の2018年の全国の税関における金地金密輸入事犯の摘発状況によりますと、2018年に全国の税関が摘発した金地金(金塊に加えて一部加工された金製品も含む)密輸入事犯の件数は1,088件(前年比約20%減)、押収量は2,119キログラム(同約65%減)でした。
 前年比では摘発件数、押収量ともに減少しておりますが、近年の金の密輸入の増加は著しいものがあり、2019年度税制改正において、その対応策を盛り込みました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年4月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》消費税改正に向けたすまい給付金のおさらい

◆すまい給付金とは?
 増税後の税率が適用される住宅ローン控除対象の住宅取得について、増税負担を軽減してくれる現金給付が受けられる制度がすまい給付金です。8%への増税があった2014年4月からスタートし、10%への増税もあることから、2017年12月までだった実施期間は2021年12月までに期間が延びています。
 また、2019年10月1日から消費税率が10%になるのにあわせて、すまい給付金の内容も拡充がなされたので、この機会におさらいしてみましょう。

◆給付額は都道府県民税所得割額が基準
 消費税率8%時は都道府県民税の所得割額により、
6.89(3.445)万円以下  30万円給付
8.39(4.195)万円以下  20万円給付
9.38(4.690)万円以下  10万円給付
となり、消費税率10%時には、
7.60(3.800)万円以下  50万円給付
9.79(4.895)万円以下  40万円給付
11.90(5.950)万円以下 30万円給付
14.06(7.030)万円以下 20万円給付
17.26(8.630)万円以下 10万円給付
(カッコ内は政令指定都市の場合)
となります。また、神奈川県の場合は税率が異なるため、表記より少しだけ基準となる額が高くなります。
 なお、ふるさと納税等で所得割額を減らしていると、すまい給付金サイトに記載されている「収入額の目安」である8%時510万円以下、10%時775万円以下を超えていても、給付が受けられる可能性もあります。都道府県民税の額面をしっかりチェックしてみましょう。

◆住宅の消費税率の決定タイミングは?
 基本的なことですが、本来消費税の額は引渡し時の税率により決定します。ただ、住宅は契約から引渡しまで長期間を要するため、引渡し時期による消費税率の変動を考慮し経過措置が設けられています。
 住宅の工事請負契約を税率引上げの半年前(今回の増税タイミングで言えば2019年4月1日)までに結んでいれば、引渡しが10月1日以降であっても、住宅にかかる消費税率は8%となります。契約が4月1日以後であっても、引渡しが10月1日前であれば当然、税率は8%です。

 

消費増税で郵便代値上げ

総務省は10月1日の消費増税に合わせ、手紙(25グラム以下の定形郵便物)の郵便料金を現行の82円から84円に、はがきの郵便料金を62円から63円に値上げする方針を固めました。値上げは手紙が5年半ぶり、はがきが2年4カ月ぶり。

 この値上げはあくまでも郵便料金の引き上げで、切手の購入価格に税率引き上げ分が上乗せされたということではありません。消費税は国内で事業者が対価を得て行う取引を課税対象にしているものの、「土地の譲渡や貸付け」や「有価証券の譲渡」などいくつかの取引は非課税とされていて、「郵便切手類・印紙の譲渡」も課税されない取引に含まれています。増税を前に「63円切手」や「84円切手」が登場することが予想されますが、これは切手の価格が高くなったというわけではなく、配達にかかるお金が上がったことに伴い、その郵便サービスを切手一枚で提供するために発行されるものです。

 社内の税務処理においては、郵便切手を購入したときには消費税を非課税と処理し、配達代金として郵便切手を郵便物に貼って使用したときに初めて消費税を負担したとするのが本来の形と言えます。しかしそこまで厳密な処理を行うことは実務的ではありません。そこで、購入したときに課税対象の「通信費」に計上して、消費税を負担したものと扱う実務が認められています。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》相続承継の場合の消費税納税義務判定

◆常識的な解釈
 平成24年7月掲載と記されている東京地方税理士会ホームページ(会員専用ページ)を見ると、基準期間の課税売上高が1千万円超の被相続人が死亡したが、相続人は誰も課税事業者ではなく、相続開始の年の年末では未分割であるような場合、法定相続割合に応ずる被相続人の基準期間の課税売上高に基づいて納税義務の判定をして相続開始の日の翌日から年末までの消費税の申告を行い、且つ、翌年、未分割遺産が分割され、事業承継が確定する場合には、事業承継割合に応ずる被相続人の基準期間の課税売上高に基づいて納税義務の判定をして年初に遡及して消費税の申告を行う、とされています。
 相続の遡及効は、未申告の本年に限られ、前年の申告済み消費税額について修正申告又は更正の請求による訂正はできません、としています。

◆国税局の解釈
 ところが、平成27年3月24日付の大阪国税局の照会事例で、遺産分割協議が確定した場合に於いて、事業承継割合での判定が課税事業者、法定相続分割合での判定が免税事業者である時、相続人の納税義務を法定相続分割合で判定することができる旨明らかにされました。
 また、平成24年9月18日付けの東京国税局の照会事例でも、法定相続分に応じて判定したことにより免税事業者となった相続人が、遺産分割が確定したことにより、結果として事業の全部を承継したとしても、その事実により、相続人の当初の納税義務判定が覆ることはない、としています。
 考え方は、消費税は税の転嫁を予定して立法されているものであり、その年の納税義務の有無については、その年の前年12月31日の現況に基づいて判定すべきであるという、理解に拠るところです。

◆有利適用の為の遡及は?
 ただし、この当局見解表明は、法定相続分による判定が課税事業者、事業承継割合での判定が免税事業者というような場合のように、年初への遡及効の適用を望むことがある時まで、これを否定するものではありません。照会事例の回答文書は、「標題のことについては、……貴見のとおりで差し支えありません。」と言うことであり、納税者有利の場合の有利適用を承認しているだけだからです。

 

《コラム》消費税改正に向けた住宅ローン控除周辺の改正

◆住宅ローン控除は平準化を目指し改正
 消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化の観点から、住宅ローン控除についての改正が行われます。
 2019年10月から20年12月までに入居する住宅で、消費税が10%となる住宅については、控除期間が現行の10年から13年に延長されます。
・1~10年目:住宅ローン年末残高×1%(※最大40万円)
・11~13年目:次のいずれか少ない金額
 ①住宅ローン年末残高×1%
 ②取得価額(※最大4000万円)×2%÷3
※長期優良住宅等の場合:50万円・5000万円

◆「すまい給付金」も拡大
 住宅ローン控除は、支払っている所得税等から控除する仕組みであるため、収入が低いほどその効果が小さくなります。負担軽減効果が十分に及ばない収入層に対して、住宅ローン減税と併せて消費税率引上げによる負担軽減を図るのがすまい給付金です。
 このすまい給付金についても、消費税増税に併せて、給付額の上限引き上げと適用となる収入帯の増加が予定されています。
 配偶者控除ありのモデルケースの場合、消費税8%の場合は給与収入で425万円以下の場合、30万円の給付が受けられましたが、10%の場合は給与収入が450万円以下の場合は50万円の給付が受けられます。また、10万円の給付を受ける場合で見ると8%時は510万円以下だったのが10%では775万円以下となります。なお、給付を受けられるかどうかは都道府県民税の所得割額で判定されるので、ふるさと納税等で税額を減らしていると、さらに有利な条件で給付が受けられる可能性があります。

◆さらにポイント制度も新設
 国土交通省は、「良質な住宅ストックの形成」をめざし、消費税率10%で一定の性能を有する住宅の新築やリフォームに対して、商品等と交換できるポイントを発行する「次世代住宅ポイント制度」も開始予定です。 この制度は「環境」「安全安心」「健康・高齢者」「子育て・働き方」に資する住宅の新築やリフォームが対象となり、上記に資する商品を貰える予定となっていますが、今のところどんな商品が貰えるかは、まだ公表されていないようです。

金密輸、過去最悪に次ぐ1千件

消費税の税率引き上げを前に、消費税を利用した闇ビジネスが横行しています。そのスキームは、金を海外からこっそりと持ち込み、関税で支払うべき消費税を逃れたうえで売却し、税額分の利ザヤを得るというものです。

 全国の税関が2018年に摘発した金地金の密輸入は前年比2割減の1088件だったことが、財務省が2月下旬に公表した報告書で明らかになりました。前年から66%増となった17年との比較では大幅減ではあるものの、過去2番目に多い記録です。

 外国では消費税がかからず金を購入できるため、1億円の金地金は諸経費を除けば1億円で買えます。それを日本で売ると、消費税分の800万円が利ザヤとして儲けになります。そのため海外から金を持ち込む際には税関であらかじめ消費税分8%を納めることを義務付けていますが、入国時に申告せずに税関をすり抜け、日本国内の買い取り業者に持ち込んで儲けを得る犯罪が横行しています。

 消費税率が上がるほど利ザヤが大きくなることから、金の密輸事件は消費税率の8%への引き上げを境に急増。12件だった13年から、増税後の14年には119件、15年には465件と増えました。18年の1088件は前年に次いで2番目に多い数字で、押収量2119キログラムは3番目の量でした。

 消費税率が高いほどこのスキームが成功した際の儲けが多くなることから、今年10月の消費増税を境に密輸が急増することが危惧されています。そのため政府は、19年度税制改正に密輸対策を盛り込みました。その内容は買い取り業者の税額控除を制限するもので、今年4月以降は、密輸品と知りながら行った仕入れは仕入税額控除制度の適用を認めません。また10月以降は、金や白金の売り主の本人確認書類の写しの保存を仕入れ税額控除の要件に加えます。すなわち買い取り業者は、身分が分からない者から購入した場合、代わりに消費税を納税しなければならなくなります。

<情報提供:エヌピー通信社>

消費増税にらむ大手ビール各社

10月に迫った消費増税後の節約志向をにらみ、ビール大手各社の間で安価な第3のビールを巡る競争が激しさを増しています。ただ長期的には、酒税一本化で増税となる第3のビールの競争力は落ちます。真の勝者を決めるのは、減税となるビールで市場をつかむことですが、大手各社に長期的な視野に立って経営戦略を練る余裕があるのかは不透明です。

 第3のビールでは、キリンビールが昨春に新発売した「本麒麟」が本来のビールに近い風味の再現に成功したとしてヒット商品となりました。サントリービールも主力「金麦」をリニューアル。アサヒビールは「極上」やサッポロビールも「本格辛口」という新商品を投入して対抗しました。

 ただ、現在「ビール」「発泡酒」「第3」の三種類があるビール系飲料の税率は今後2026年までに段階的に統一されます。第3のビールにとっては増税で、一方ビールにとっては減税になります。そもそも3種類も税率があるのは日本独特の制度。これまで大手各社はその特殊なルールの下で高いビール税率が適用されない発泡酒、次は第3のビールの開発や販売競争に注力してきました。

 一方でビールへの投資が十分だったとは言い難い状況です。その間に、海外では個性的なクラフトビールや味わい豊かな高級ビールが若い世代を中心に受け入れられるようになっています。

 キリンがクラフトビール事業に注力したり、アサヒが欧州の高級ビールメーカーを買収したりするなど、各社とも種まきはしていますが、まだ効果的な手は打てていないのが実情です。目先の業績や株主への対応を優先し、利幅が少なく成長余力が限られる第3のビールでの販売合戦で体力を消耗してしまえば、今後の展望は厳しいと言えます。

<情報提供:エヌピー通信社>

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

不動産賃貸に関する31年経過措置の特例の活用

はじめに
 「消費税法の一部改正に伴う(平成28年改正法3)」の規定による複数税率による改正後の消費税は、平成31年10月1日(以下「31年施行日」といいます。)から施行されます。
 しかし、取引の形態及び契約の内容等によっては、8%(軽減税率)又は10%(標準税率)の新税率での消費税等の転嫁が困難な場合も想定されますので、31年施行日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、改正前の8%の旧税率(以下単に「旧税率」といいます。)が適用できる「31年経過措置の特例」の規定が設けられています(新平成28年改正法附則16)。
 このうち本稿では、店舗・事務所等の課税対象となる不動産賃貸(以下単に「不動産賃貸」といいます。)に関する31年経過措置の特例の概要と実務上の留意点について解説します。

Ⅰ 適用要件
 26年指定日(平成25年10月1日)から31年指定日の前日(平成31年3月31日)までの間に締結した不動産賃貸に係る契約に基づき、31年施行日前から引き続きその契約に係る不動産賃貸を行っている場合において、その契約の内容が次に掲げる①及び②に掲げる要件に該当するときは、31年施行日以後に行うその不動産賃貸については、旧税率が適用されます(新平成28年度改正法附則5④,同附則16①,新平成28年度改正令附則4⑥)。
① 貸付期間及び貸付期間中の対価の額が契約で定められていること
② 事情の変更その他の理由により対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと

(今月の税務トピックス②につづく)