(前編)国税庁:2017事務年度の無申告法人調査を公表!

 国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の無申告法人調査を公表しました。
 それによりますと、2017事務年度において、事業を行っていると見込まれる無申告法人2,593件(前年対比1.1%減)の実地調査を実施し、法人税50億1,700万円(同21.9%減)を追徴課税しました。

 また、消費税については1,989件(前年対比0.1%増)を実地調査した結果、消費税58億8,900万円(同17.3%増)を追徴課税し、法人税とあわせて109億600万円(同4.7%減)を追徴課税しました。
 このうち、稼働している実態を隠し、意図的に無申告であった法人税435件(同19.8%増)及び消費税302件(同23.8%増)の法人に対し、法人税27億700万円(同2.6%減)、消費税15億7,900万円(同5.7%増)を追徴課税しました。
 事案では、多額の利益が生じておりながら、意図的に無申告であった法人A社のケースがあがっております。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)会計検査院:中小企業等の貸倒引当金の特例措置の適用状況を公表!

(前編からのつづき)

 消費税等の課税事業者で所得がある1,494法人について、消費税等の課税事業者において損失とはならない仮受消費税相当額に係る貸倒引当金繰入額のうち損金の額に算入された額を試算し、これを基に推計した法人税の減収額は計2億余円となりました。

 会計検査院は、法定繰入率と貸倒損失発生率との間にかい離があること、期末一括評価債権額に損失とならない仮受消費税相当額が含まれていることなどから、繰入率特例における繰入限度額は合理的に測定されるなどしたものとなっているとはいえないおそれがあると指摘し、関係省庁に対し、貸倒引当金の特例の検証を行い、国民に対する説明責任を的確に果たしていくことを求めました。

 法定繰入率により繰入限度額を算出する措置は、1950年度税制改正により事務の簡素化等を目的として創設されて以降、法人税法等で規定され、法定繰入率は、概算で繰入率を定めているという趣旨に鑑み、常に貸倒実績率を斟酌しつつ、合理的に測定された適正なものとすることが必要として、随時、貸倒れの実績率とのかい離がある場合には引下げ等が行われてきました。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

《コラム》消費税仕入税額控除 請求書等の記載内容が変わります

 仕入税額控除の適用を受けるために、現行制度下では帳簿及び請求書等の保存を要件とする請求書等保存方式が採用されています。軽減税率制度の実施に伴い、2019年10月1日からは区分記載請求書等保存方式が、2023年10月1日からは適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されます。

◆区分記載請求書等保存方式
 2019年10月1日以降の取引については、飲食料品等に軽減税率が適用され複数税率となることから、消費税の税額計算を適正に行うためには、税率ごとに区分経理を行う必要があります。従来の請求書等保存方式の内容を基本的に維持しつつ、区分記載請求書等保存方式においては、帳簿及び請求書等の現行の記載事項に加え、課税仕入れに係る資産又は役務の内容について軽減税率の対象である場合には「軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨」の記載が必要とされます。また、資産の譲渡等の対価の額の合計額についても、税率ごとに区分することが必要となります。これら新たに加えられる記載事項については、請求書等の交付を受けた事業者が追記することも認められています。

◆適格請求書等保存方式
 適格請求書等保存方式の下では、帳簿及び適格請求書発行事業者が交付する「適格請求書」又は「適格簡易請求書」の保存が仕入税額控除の要件となります。適格請求書を交付できるのは適格請求書発行事業者に限られます。適格請求書発行事業者になるためには、税務署長に登録申請書を提出して登録を受ける必要があります。なお、課税事業者でなければ登録を受けることはできません。
 保存する帳簿及び請求書等の記載事項は、帳簿については区分記載請求書等保存方式と変わりませんが、「適格請求書」及び「適格簡易請求書」については区分記載請求書等の記載事項に加え、登録番号、税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分した合計額及び適用税率、消費税額等の記載が必要となります。
 軽減税率制度実施後の一定期間は、税率の区分計算が困難な中小事業者を対象とする税額計算の特例が設けられます。制度の概要、自社への影響を理解したうえで対応準備をしておきましょう。

今月の税務トピックス② 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

(今月の税務トピックス①よりつづく)

Ⅳ 31年施行日を含む1年間の役務提供を行う場合
 役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、物の引渡しを要するものにあってはその目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しないものにあってはその約した役務の全部を完了した日とされています(消基通9-1-5)。
 例えば、平成31年3月1日に、同日から1年間のコピー機械等のメンテナンス契約を締結するとともに、1年分のメンテナンス料を受領した場合には、資産の譲渡等の時期は役務の全部を完了する日である平成32年2月28日となりますので、新税率が適用されます。ただし、契約又は慣行により、1年分の対価を収受することとしており、事業者が継続してその対価を収受したときに収益に計上しているときは、31年施行日の前日までに収益に計上したものについては旧税率を適用して差し支えありません(31年経過基本Q&A問6)。

Ⅴ 決算締切日の取扱い
 「法人税法における決算締切日(法基通2-6-1)」の取扱いを適用している場合であっても、施行日前に行われた資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧税率が適用され、31年施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については、原則として、新税率が適用されます(新平成28年改正法附則15)。
 例えば、決算締切日を毎年9月20日としている場合、平成31年9月21日から平成31年9月30日までの間に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧税率が適用されることとなります。
 なお、継続的に、売上げ及び仕入れの締切日を一致させる処理をしている場合には、平成31年9月21日から平成31年9月30日までの間の売上げ及び仕入れについては、平成31年10月分の売上げ及び仕入れとして、消費税の申告をして差し支えありません(31年経過基本Q&A問5)。

おわりに
 平成31年10月1日以後の取引については、原則として新税率で課税することとされています。
 しかし、取引の形態及び契約の内容等によっては新税率での消費税等の転嫁が困難な場合も想定されますので、例外として31年経過措置の特例も規定されています。
 次回の会報では、この31年経過措置の特例の解説をします。

今月の税務トピックス① 税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

消費税率引上げに伴う31年経過措置の原則

はじめに
 「消費税法の一部改正に伴う(平成28年改正法3)」の規定による複数税率による改正後の消費税(以下「31年新消費税法」といいます。)は、平成31年10月1日から施行されますので、平成31年10月1日以後に期限が到来する申告にあたっては、8%(以下「旧税率」といいます。)が適用されるものであるか、8%(軽減税率)又は10%(標準税率)(以下単に「新税率」といいます。)が適用されるものであるか、その税率の切り換え時点については慎重に区分計算する必要があります。
 そこで本稿では、消費税率の切り換えに伴う31年経過措置の原則の概要と実務上の留意点について解説します。

Ⅰ 31年経過措置の原則
 31年新消費税法は、平成31年10月1日(以下「31年施行日」といいます。)以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等並びに31年施行日以後に国内において事業者が行う課税仕入れ等に係る消費税について適用され、平成26年4月1日(以下「26年施行日」といいます。)から31年施行日の前日までの間に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れ等に係る消費税については、なお従前の例によることとされています(新平成28年改正法附則15)。
 なお、31年施行日以後に行われる軽減対象資産の譲渡等については、軽減税率が適用されます(31年経過基本Q&A問1)。

Ⅱ 31年施行日前の契約に基づく取引
 31年施行日の前日までに締結した契約に基づき行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、31年施行日以後に行われるものは、原則として、その資産の譲渡等及び課税仕入れ等について新税率が適用されます(31年経過通達2)。

Ⅲ 31年施行日の前日までに購入した在庫品
 31年施行日の前日までに仕入れた商品を31年施行日以後に販売する場合には、原則として、その販売については新税率が適用されますが、商品の仕入れについては施行日の前日までに行われたものですから、課税仕入れに係る消費税額は旧税率が適用されます(31年経過通達3,31年経過基本Q&A問2)。

(今月の税務トピックス②につづく)

増税対策 ギフトカードは還元なし

今年10月に予定される増税対策の柱とされるキャッシュレス決済のポイント還元について、政府はポイント還元の対象とならない除外リストの品目を固めました。もともと消費税のかからない学費や医療費に加えて、個別に増税対策を講じる車や住宅、転売を繰り返すことで利益が得られるギフトカードなどを盛り込んでいます。政府は大手フランチャイズか中小店かで還元率を分ける方針で、ここにポイント還元の対象区分が加わることで、制度の複雑さは増す一方です。

 経済産業省や財務省が固めた案ではまず、もともと消費税のかからない業種・商品にはポイント還元を行わないとしています。これに該当するのは、病院の診療費、手術代、介護施設の利用料、薬代など。保険適用外で消費税がかかる美容整形などはポイント還元の対象となります。
 同様に小中学校、高校、大学の入学料や受験料、学費も消費税がもともとかからないため、除外されます。一方、塾や予備校、英会話学校の授業料などは還元対象。

 次に、すでに税制改正で個別に増税対策を手当した自動車と住宅についても、ポイント還元から外します。12月に決定した2019年度税制改正大綱では、車の増税対策として自動車税の恒久減税を、住宅の増税対策として住宅ローン減税の拡充を盛り込んでいるためです。車や住宅は価格が高額になる分、ポイント還元による恩恵の大きさが期待されていましたが、制度の対象から外されることとなりました。

 最後に、換金性が高く転売することで多額の利益が見込める商品も除外されます。ギフトカードやプリペイドカード、切手などが該当します。またクレジットカードで購入できる投資信託などもあるため、株式や債券といった金融商品も還元制度から外すとしています。

<情報提供:エヌピー通信社>

消費税還付や海外取引に国税ギラリ

消費税調査や海外取引法人への法人税調査で発覚する申告漏れ所得と追徴税額が、ここ数年で急速に増えています。国税庁によると、平成29年度の消費税調査による追徴税額の総額は748億円で、5年前の474億円と比べて57.8%増にもなりました。また、29年度の法人税調査で把握された申告漏れ所得は9996億円で5年前から4億円の微増でしたが、海外取引にかかる申告漏れ所得に限れば5年前の2452億円から3670億円へと49.7%増でした。

 消費税や海外取引にからむ不正としては、インターネットで海外旅行客向けのツアーを販売するA社が、ソフトウェア取得の対価を消費税の課税仕入れとして多額の還付申告をしたケースがあります。実際には取得の事実はなく、無申告法人に虚偽の契約書を作成させ、申告の際の添付資料にしていました。

 また、自動車部品の卸売業を営むB社は租税回避地に100%子会社を設立。子会社は決算書で、グループ会社への売上割合が本来は55%であるにもかかわらず、45%として申告していました。この虚偽申告は、「外国子会社合算税制」の適用を免れるためのものです。外国子会社の売上の過半がグループ会社以外の第三者取引によるものでなければ外国子会社合算税制の対象となりますが、B社の子会社の第三者取引割合は45%(100%グループ会社への売上55%)であるため、B社は子会社の売上も合算して法人税を納めなければなりませんでした。

 広告代理店業を営むE社は、自社所有の社員専用宿舎の空き部屋を民泊として観光客などに貸し出し、代表者が個人名義で代金を受け取っていましたが、申告除外していました。税務署は代表者が使用するパソコン内の民泊仲介サイトのアカウント情報から取引履歴を確認。税務申告の際に民泊収入を含めず、消費税額を圧縮していた事実を把握しました。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

《コラム》平成31年度税制改正大綱 消費税編

◆与党大綱、消費増税「確実に実施」と明記
 「消費税対策」が中心に据えられた平成31年度の税制改正。与党税制改正大綱では、「消費税率10%への引上げを平成31年10月に確実に実施する。」と明記され、現政権の堅い決意を表明しています。
 既に30年11月に自民党税制調査会が「消費税率引上げに伴う対策について」の中で対策の大枠を掲げていました。

 ○駆け込み・反動減中小・小規模対策:耐久消費財対策(平成31年改正)
 ○逆進性対策:軽減税率導入
 ○負の所得効果対策:賃金引上げ、幼児教育無償化

◆「複雑となりすぎた制度」環境整備急務
 これが、与党税制改正大綱の「消費税率の引上げに伴う対応」の3項目に落とし込まれました。特に軽減税率導入時の混乱が予想されるため、環境整備が急がれます。
 ①需要変動の平準化に向けた取組み(価格表示・転嫁対策、住宅・自動車の措置)
 ②軽減税率制度の実施(Q&A追加、個別相談、レジ導入支援など)
 ③医療費に係る措置(診療報酬の補てん状況を調査・対策)

◆「屋台でも免税」臨時販売場の出店容易に
 東京オリンピック開催に備え、外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売所制度)が見直され、事業者が地域の祭りやイベントに免税店を出店する際の手続きが簡素化されます(「臨時販売場に係る届出制度」の創設)。現行制度では、屋台など短期間で免税店を出店する場合でも、常設店同様の提出書類(店の見取図、マニュアル、免税対象品目など)が必要で、審査に時間がかかるため、申請を見送るケースも多くありました。この制度の開始は、平成31年7月からとなります。

◆急増する金密輸に対策:買取側控除に制限
 ニュース等で話題の「金密輸」についても対策が講じられます。国外から日本に金を持ち込む場合には、申告を行い、消費税を納める義務がありますが、密輸業者は金を隠して持ち込み、国内買取業者に消費税を上乗せして販売。差益を得ていました。
 これに対し、①密輸品と知りながら行った課税仕入れは仕入税額控除を認めない、②金・白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の保存を仕入税額控除の要件に加える措置がされました(H31.4~)。

(後編)国税庁:2019年1月からQRコード利用のコンビニ納付を開始!

(前編からのつづき)

 確定申告書等作成コーナーからの作成・出力方法とは、確定申告書等作成コーナーにおいて、所得税、消費税、贈与税の申告書を作成する際に、QRコードの作成を選択することで、申告書にあわせて、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。
 また、国税庁ホームページからの作成・出力とは、国税庁ホームページのコンビニ納付用QRコード作成専用画面において、納付に必要な情報(住所、氏名、納付税目、納付金額等)を入力することで、QRコード(PDFファイル)を印字した書面を出力(作成)します。

 なお、作成したQRコードをスマートフォンやタブレット端末に保存し、スマートフォンやタブレット端末の画面に表示してキオスク端末に読み取らせることもできます。
 現行は、QRコードを利用したコンビニ納付手続きの利用可能なコンビニ自体がまだまだ少ないことから、国税庁では端末を設置する店舗を増やすよう働きかけていくとしております。
 今後の動向に注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成30年12月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

金密輸が過去最悪を更新

今年6月末までの1年間に、日本に金を密輸しようとして全国の税関に摘発され、罰金や刑事告発といった処分を受けた件数が720件(前年度比約1.5倍)、脱税額が約15億円(同約1.7倍)で、いずれも過去最悪を記録したことが財務省の発表で明らかになりました。
 金密輸の摘発は平成26年の消費税率引き上げを境に急増。25年度は8件でしたが、増税後の26年度に177件、27年度に294件、28年度に467件と急激な右肩上がりとなっています。

 29年度の720件は4年前の90倍という異常な伸び率になっています。脱税額でみても3100万円から15億円にまで増えました。処分したもののうち、約96%(691件)が航空機旅客による密輸となっています。その隠匿手口は、これまで多く見られたサポーターを使って体に巻きつける手口などのほか、特殊な形態に加工して下着に隠匿したり、モバイルバッテリー内に隠匿して密輸しようとしたりするなど、巧妙な隠匿手口が新たに見つかっています。

 密輸元は韓国、中国、台湾の順に摘発件数が多く、この上位3カ国・地域で全体の9割を占めました。
 金は世界共通の価格で売買されていますが、日本での売買には消費税がかかるため、例えば1億円の金塊を外国で購入し、日本で売ると1億800万円を受け取れます。そのため海外から金を持ち込む者には、税関であらかじめ消費税分8%を納めることを義務付けています。しかし入国時に申告せずに税関をすり抜け、日本国内の買い取りショップに持ち込んで利ザヤを抜くビジネスが横行しています。

<情報提供:エヌピー通信社>