(後編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!

(前編からのつづき)

 具体的には、建物(附属設備を含む)又は構築物および所得税法2条1項19号に規定する減価償却資産(機械及び装置、車両及び運搬具、工具、器具及び備品等)をいいます。
 一連の改正の背景には、会計検査院によりますと、小規模宅地等の特例を適用した者の中には相続後、短期間で宅地等を譲渡していた者が多数いたことが実態調査により明らかになったことを踏まえ、事業や居住の継続への配慮という政策目的に沿ったものとなっていないとの指摘がありました。

 具体的には、会計検査院は2017年11月、相続により取得した土地等の財産を相続税の申告期限の翌日以降3年を経過するまでに譲渡していた2,907人の適用状況を調査した結果、243人が小規模宅地等の特例を適用しており、そのうち相続人が相続税の申告期限から1年以内に譲渡していたものが約6割の163件あり、1ヵ月以内に譲渡していたものが22件ありました。
 相続税の特定事業用の小規模宅地等の特例の適用要件が、税制改正において、厳しく見直されておりますので、該当されます方はご注意ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)2019年度税制改正:事業用小規模宅地等の特例の適用要件を見直し!

 小規模宅地等の特例は、事業用、居住用宅地等の相続税の課税価格を8割又は5割減額して相続人の事業や居住の継続等への配慮を目的に創設された制度ですが、2018年度税制改正においては、一定の要件に該当する「家なき子特例」とともに、相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地等が制度の適用から除外されました。

 そして、2019年度税制改正においては、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に新たに事業の用に供された宅地等が除外され、すでに2019年4月1日以後に相続や遺贈により取得する宅地等の相続税から適用されております。

 ただし、その宅地に該当する場合であっても、その宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、その宅地等の相続時の価額の15%以上である場合の事業を行っていた被相続人等の事業の用に供されたものである場合には、特例の適用対象とされ、その特例が適用される事業用資産が明示されておりますので、ご確認ください。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

不動産の譲渡所得が9年連続増加

国税庁はこのほど、2018年に土地や建物を売った人の譲渡所得の合計金額が5兆円を超え、9年連続でプラスを記録したと発表しました。譲渡所得が伸び続ける背景には、近年続く地価の上昇傾向があり、土地の値段が上がるということは、相続税対策の重要性がますます高まっていることを意味します。

 昨年に確定申告書を提出した人のうち、土地や建物を売却して所得を得た人は35万3千人でした。その所得の合計金額は5兆328億円で前年から5.8%伸び、9年連続のプラスを記録しています。

 譲渡所得の伸びの背景にあるのは、近年の地価の上昇傾向です。国交省が3月に発表した最新の公示地価では、全国の地価は前年から1.2%上昇し、4年連続で上昇しました。住宅地ではリーマン・ショック以来、初の上昇に転じた前年からプラス幅を拡大し、地方圏では全用途でバブル期以来27年ぶりのプラスに転じるなど、これまでは都市部にとどまっていた地価の上昇傾向が、ついに全国に波及しつつあります。こうした全国的な地価の高騰が、そのまま土地・建物の譲渡所得の伸びにつながっていると言えます。

 地価の上昇はそのエリアの経済に好影響を与える一方で、不動産オーナーの相続対策という観点から見ると素直に喜べない面もあります。相続で受け継がれた土地が財産としての価額を計算される際には、公示地価や現場での取引相場などを基に算定されます。つまり地価の上昇は、そのまま相続税負担の増加となって表れるからです。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

三種の神器は非課税に

このほど行われた皇位継承では、皇位の証しとされる八咫鏡(やたのかがみ)、草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)の「三種の神器」も新天皇に受け継がれました。1989年の天皇即位時は、これらは「相続」されましたが、今回は生前退位のため「生前贈与」となりました。そのため、相続と違って非課税とされていない「贈与」の取り扱いについて、急きょ生前贈与も非課税とする措置が取られています。

 三種の神器は、天皇の私的財産と位置付けられています。一方で、皇室経済法で定められた「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」ともされていて、相続税は課税対象外になっています。しかし、退位による生前贈与はこれまで想定されていなかったため、通常であれば課税対象となっていました。

 しかし、新たに皇室典範特例法の規定を設け、今回の皇位継承に限り特別扱いして贈与税を非課税とする措置がとられました。これにより、神話の世界の天照大神(あまてらすおおみかみ)にまつわるとしている三種の神器には贈与税が課されないことになりました。

 ただ今回の措置はあくまでも一回限りの特例です。日本全体にとって問題となっている少子高齢化は皇室といえど避けられず、女性天皇や女系天皇の議論同様、生前退位やそれに伴う税処理についての恒久的な議論も将来的には求められそうです。

 宮内庁は現在、相続税の対象外となる「由緒ある物」に約600件を指定しています。三種の神器以外に、宮中祭祀が行われる宮中三殿といった不動産や歴代天皇の直筆の書などの動産が含まれています。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

《コラム》社団法人って何?

◆社団法人とは
 社団法人と言うと、○○協会とか、○○協議会等公益性の強いイメージがありますが、それはかつて社団法人は、民法34条や特別法に基づき設立される公益目的の団体の名称だったからです。
 しかし2006年の公益法人制度改革により、一般社団法人と公益社団法人と2つになり、公益社団法人は、許認可制で今まで通り公益性が必要ですが、一般社団法人は誰でも簡単に設立できるようになりました。

◆一般社団法人とは
 人が集まった団体と言った程度の意味です。人が集まって団体を設立することは、全く自由です。しかしその団体が団体として活動したり資産(土地や建物)を所有するためには、一個の団体として法律的な認知をしてもらう必要から、法人格を付与されたものが一般社団法人です。

◆普通一般社団法人と非営利型一般社団法人
 税務上、一般社団法人は株式会社等と同様利益に対して通常の法人税が課せられます。しかし元来社団法人は営利を目的としてもしなくてもよい団体ですから、一般社団法人で営利を目的としていないことが明確(非営利型一般社団法人)であれば、税務上の優遇措置を受けられます。その要件は概ね以下です。
(1)解散したときは、残余財産を国や一定の公益的な団体に寄贈すること
(2)特定の個人又は団体に特別の利益を与えていないこと
(3)各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

◆優遇措置
 非営利事業に対しては課税されません。社団法人設立にあたって出資した資金や、その後社団法人に寄付した基金は相続財産から除かれます。これを利用した相続対策が多発したため「贈与した者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合には、受け取った側の一般社団法人を個人とみなして贈与税又は相続税を課税する」となっておりますのでご留意ください。

 

(後編)国税庁:2017年分相続税の申告状況を公表!

(前編からのつづき)

 また、相続財産価額から被相続人の債務や葬儀費用などを差し引き、相続開始前3年以内の生前贈与等を加算した相続税の課税価格は、15兆5,884億円で前年比5.5%増加し、税額も2兆185億円となり、同8.1%増とともに増加しました。
 被相続人1人あたりでみてみますと、課税価格が前年比0.1%減の1億3,952万円、税額は同2.4%増の807万円となりました。

 また、相続財産額の構成比は、「土地」が36.5%と最多となり、以下、「現金・預貯金等」が31.7%、「有価証券」が15.2%、退職金や生命保険などが含まれている「その他」が11.2%、「家屋」が5.4%となりました。
 前年と比べて「土地」は1.5ポイント減少しましたが、「現金・預貯金等」は0.5ポイント増加しました。
 相続税の課税強化がされても、相続財産の課税価格が基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)以内におさまる割合はなお多い模様です。
 今後の動向にも注目です。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(前編)国税庁:2017年分相続税の申告状況を公表!

国税庁は、2017年分相続税の申告状況を公表しました。
 それによりますと、2017年中に亡くなった人(被相続人)は、過去最高でした2016年分(130万7,748人)を2.5%上回る134万397人となりました。
 このうち、相続税の課税対象被相続人数は、同5.5%増の11万1,728人にのぼり、課税割合は8.3%となって、過去10年間において最高の課税割合となりました。
 ちなみに、前々年の2015年分の課税割合は、8.0%(2014年分は4.4%)でした。

 2013年度税制改正において、相続税の課税ベースの拡大と税率構造の見直しが行われました。
 具体的には、2015年1月以後の相続等から、相続税の基礎控除額について、改正前の「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」から、改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に引き下げるとともに、最高税率も55%に引き上げました。
 この課税強化の影響等もあって、課税割合の大幅な上昇につながっていると思われます。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月15日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

(後編)国税庁:2017事務年度の相続税の調査事績を公表!

(前編からのつづき)

 申告漏れ相続財産の内訳をみてみますと、「現金・預貯金等」が1,183億円(前事務年度1,070億円)と最多、以下、「有価証券」が527億円(同535億円、構成比15.2%)、「土地」が410億円(同383億円、同11.8%)、「家屋」が62億円(同56億円、同1.8%)、「その他(不動産、有価証券、現金・預貯金等以外)」が1,289億円(同1,189億円、同37.1%)となりました。

 無申告事案は、前事務年度より25.2%多い1,216件の実地調査を行い、そのうち84.3%にあたる1,025件(前事務年度比36.5%増)から987億円(同14.0%増)の申告漏れ課税価格を把握し、88億円(同27.7%増)を追徴課税しました。

 国税庁は、海外資産関連事案についても資料情報や相続人・被相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案などを積極的に調査しており、2017事務年度に1,129件(前事務年度比23.1%増)の実地調査を行い、そのうち134件(同14.5%増)から海外資産に係る申告漏れ課税価格70億円(同32.5%増)を把握しました。

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

 

(前編)国税庁:2017事務年度の相続税の調査事績を公表!

 国税庁は、2017事務年度(2018年6月までの1年間)の相続税の調査事績を公表しました。

 それによりますと、2015年中に発生した相続を中心として、申告額が過少なものや申告義務がありながら無申告と思われるものなど1万2,576件(前事務年度比3.8%増)を実地調査し、そのうち83.7%にあたる1万521件(同6.0%増)から3,523億円(同6.9%増)の申告漏れ課税価格を把握して、加算税107億円を含む783億円(同9.3%増)を追徴課税しました。
 実地調査1件あたりでは、申告漏れ課税価格2,801万円(前事務年度比3.0%増)、追徴税額623万円(同5.3%増)となりました。
 また、申告漏れ額が多額だったことや故意に相続財産を隠ぺいしたことなどにより重加算税を賦課した件数は1,504件(同15.7%増)となり、その重加算税賦課対象額は576億円(同6.7%増)、重加算税賦課割合は14.3%(同1.2ポイント増)となりました。

(後編へつづく)

(注意)
 上記の記載内容は、平成31年2月1日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

《コラム》平成31年度税制改正大綱 資産課税編

◆個人事業者版の事業承継税制創設
 平成30年度税制改正では、非上場会社の事業承継税制の大胆な見直しが行われましたが、これに続き31年度改正では、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
 総務省の調査では、平成37年には個人事業者の73%(150万人)が70歳以上となると報告され、世代交代を後押しする施策が求められています。そのため、10年間の時限措置として、承継資産(土地・建物・機械等)に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予される制度が整備されます。
 なお、この制度は小規模宅地等(特定事業用宅地等)との選択適用になります。

○個人事業者の事業用資産の納税猶予(相続税)
対象者:認定相続人(承継計画の認可)
適用期間:H31.1.1~H40.12.31
要件:①相続又は遺贈により特定事業用資産を取得し、事業を継続していくこと②申告期限までに担保提供・申請書提出
対象資産:特定事業用資産(不動産貸付事業除く)
①土地(地積400㎡まで)、②建物(床面積800㎡まで)、③一定の償却資産
※青色申告書に添付する貸借対照表に計上されているもの
承継後:継続届出書を税務署に提出

◆特定事業用宅地等(小規模宅地)の見直し
 小規模宅地等の減額制度の濫用を防止する観点から、特定事業用宅地等から相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除かれることとなります。ただし、その宅地の上で事業供用される償却資産の価額が土地の価額の15%以上であれば、適用対象とされます(H31.4以後の相続より適用)。

◆民法の成人年齢引下げに伴う改正
 平成34年4月以後の相続・贈与より、次の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
・相続税:未成年者控除の対象者の年齢
・贈与税:下記の受贈者の年齢要件
①相続時精算課税制度、②直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率、③非上場株式等に係る贈与税の納税猶予

◆一括贈与非課税に受贈者の所得要件が追加
 「教育資金」、「結婚・子育て資金」の一括贈与非課税については、受贈者の所得要件が設けられることとなりました。平成31年4月以後の贈与からは、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用できません。また、23歳以上の趣味の習い事代は「教育資金」の範囲外とされました(H31.7以後の贈与より)。