地方法人税の創設 平成26年度税制改正

概要

 平成26年度税制改正により、地方法人税が創設されることになりました。地域間(地方自治体間)の税源の偏在性を是正し、財政力格差の縮小を図ることを目的としたものです。

 具体的には、地方税である法人住民税の法人税割の一部を国税である地方法人税に移行し、この国税として徴収された地方法人税の税収全額を各地方自治体に配分する地方交付税の原資とします。

 同様の趣旨で既に設けられている地方法人特別税の税率が引下げられ事業税率が引き上げられます。

いずれも結果的には、納税者の税負担にはほとんど影響がないものと推測されます。

 

中小企業投資促進税制 上乗せ措置

平成26年度税制改正の概要

中小企業投資促進税制の上乗せ措置については次の通りとなります。

まず、資本金3000万円以下の法人と個人事業主は、特別償却については通常30%の償却率のところが即時償却(取得価額100%を購入時に損金処理)に上乗せになります。税額控除については、通常7%の税額控除が10%の税額控除となります。

次に資本金3000万円超1億円以下の法人は、特別償却については通常30%の償却率のところが即時償却に上乗せになります。税額控除については、従来の中小企業投資促進税制では認められていませんでした。それが上乗せ措置で税額控除の適用も可能となり、7%の税額控除が適用できるようになりました。

適用期間

上乗せ措置の適用期間は、平成26年1月20日から平成29年3月31日までに取得して事業の用に供した設備が対象です。

対象設備

今回の上乗せ措置の対象は、特に生産性の向上に資する以下の設備が対象です。(最低価額の要件がありますので御注意ください。)

【先端設備】

○機械装置
・最新モデル(NC旋盤などソフトウエアが組み込まれた機械は一代前モデルも含む。)、かつ、年平均1%以上の生産性向上要件を満たすもの

○サーバー(サーバー用OSを同時に取得するもの)
・最新モデル、かつ、年平均1%以上の生産性向上要件を満たすもの

○試験又は測定機器
・最新モデル、かつ、年平均1%以上の生産性向上要件を満たすもの ※最新モデル、生産性向上要件は、設備メーカーが工業会等から証明書をとることになっています。 ユーザーである中小企業・小規模事業者の方の追加事務は原則ありません。

○ソフトウエア(設備の稼働状況等の情報収集・分析・指示機能を持つもの)

※ソフトウエアが設備の稼働状況等の情報収集・分析・指示機能を持つかどうかは、ソフトウエアを提 供するベンダー側で、工業会等の証明書をとることになっています。ユーザーである中小企業・小規 模事業者の方の追加事務は原則ありません。

【生産ライン等の改善に資する設備】
○生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(投資計画を作成 し、投資利益率が5%以上であることについて地方経済産業局の確 認を受けた投資計画に記載されたもの)

 

平成26年6月

江戸川区南小岩6-6-8  鈴木税務会計事務所

相続税の取得費加算の特例 平成26年度税制改正

相続税の取得費加算の特例とは

土地を多く所有する地主の場合、多額の相続税が見込まれ、保有している現金だけでは相続税を支払えないケースが想定されます。このような場合には、土地を売却して納税資金を確保しますが、相続により取得した土地を相続税の申告書の提出期限の翌日から3年以内(相続開始の日の翌日から3年10ヶ月以内)に譲渡した場合には、土地について納めた相続税額を取得費に加算して譲渡所得の金額の計算をすることができます〔措法39(1)、措令25の16〕。

改正の内容

現行制度では取得費に加算する金額は、『その者が相続で取得した全ての土地等に対応する相続税相当額』と規定されていました。そのため土地については、売却した土地に対応する相続税だけでなく、他の売却しない土地にかかる相続税も売却した土地の取得費に加算でき、土地を多く相続した場合には、譲渡所得税を大きく削減できました。

今回の税制改正大綱では、『その譲渡した土地等に対応する相続税相当額』に縮減すると記載されています。そのため、相続した土地を売却した場合に、納めた相続税を取得費に加算できるのは、「売却した土地に対応する相続税だけ」となります。

 

この相続税の取得費加算の特例の改正は、平成27年1月1日以後の相続により取得した土地等について適用されます。

ゴルフ会員権等の譲渡損失の損益通算 平成26年度税制改正

改正の内容

改正前は、ゴルフ会員権を売ったことにより生じた損失は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することができましたが、この取扱いが平成26年3月31日までに行われる譲渡をもって廃止となりました。

平成26年4月1日以後に行ったゴルフ会員権の譲渡により生じた損失は、原則として、給与所得など他の所得と損益通算することはできません。

 

平成26年6月現在

 

給与所得控除の縮小 平成26年度税制改正

給与所得控除の改正の概要

給与収入に対する課税については、収入額に対してそのまま課税されるのではありません。収入を得るための経費があるものとみなし、収入に応じた一定の控除額(給与所得控除額)を差し引いた後の金額に課税されています。

現在、給与所得控除額は年収1500万円時における245万円を上限とされています。この上限額が次のように引き下げられ、下記年収額を超える人にとっては所得税負担が増えることになります。

現  行  平成28年分の所得税  平成29年分の所得税
  上限が適用される給与収入  1,500万円  1,200万円  1,000万円
 給与所得控除の上限額  245万円  230万円  220万円

 

平成26年6月現在

復興特別法人税の改正 平成26年度税制改正

復興特別法人税の改正の概要

平成26年改正法により、復興特別法人税の課税の対象となる事業年度(以下「課税事業年度」といいます。)は、「平成24年4月1日から平成26年3月31日(改正前:平成27年3月31日)までの期間(指定期間)内に最初に開始する事業年度開始の日から同日以後2年(改正前:3年)を経過する日までの期間内の日の属する事業年度」とされました(復興財源確保法40十、45、復興特別法人税令3)。これにより、復興特別法人税の課税期間が1年短縮されました。 したがって、平成 26 年4月1日以後に開始する事業年度については、原則として、課税事業年度にはなりません。

(注)1 平成 26 年4月1日以後に開始する事業年度であっても、事業年度変更などにより、その事業年度に、指定期間内に最初に開始する事業年度開始の日から同日以後2年を経過する日までの期間内の日が含まれることとなる場合には、課税事業年度となります。

(注)2 事業年度変更などにより法人の各課税事業年度の月数の合計が 24 月を超えることとなる場合には、その超えることとなる課税事業年度の課税標準法人税額について、一定の調整計算を行うこととなります。

印紙税の非課税範囲の拡大

改正の概要

「所得税法等の一部を改正する法律」により、印紙税法の一部が改正され、平成 26 年4月1日以降に作成される「金銭又は有価証券の受取書」に係る印紙税の非課税範囲が拡大されました。

現在、「金銭又は有価証券の受取書」については、記載された受取金額が3万円未満のものが非課税とされていますが、平成 26 年4月1日以降に作成されるものについては、受取金額が5万円未満のものについて非課税とされることとなりました。

「金銭又は有価証券の受取書」とは

「金銭又は有価証券の受取書」とは、金銭又は有価証券を受領した者が、その受領事実を証明するために作成し、相手方に交付する証拠証書をいいます。 したがって、「領収証」、「領収書」、「受取書」や「レシート」はもちろんのこと、金銭又は有価証券の受領事実を証明するために請求書や納品書などに「代済」、「相済」、「了」などと記入したもの、さらには、「お買上票」などと称するもので、その作成の目的が金銭又は有価証券の受領事実を証明するために作成するものであるときは、金銭又は有価証券の受取書に該当します。

印紙税の還付について

印紙税の納付の必要がない文書に誤って収入印紙を貼ったような場合には、所轄税務署長に過誤納となった文書の原本を提示し、過誤納の事実の確認を受けることにより印紙税の還付を受けることができます。
「領収証」等を取引の相手方に交付している場合でも、過誤納の事実の確認を受けるには、過誤納となった文書の原本を提示する必要があります。

 

消費税 簡易課税 平成26年度税制改正

簡易課税の概要

簡易課税制度とは、事業者の基準期間(その課税期間の前々年又は前々事業年度)における課税売上高が 5,000 万円以下で、その課税期間開始の日の前日までに『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出している場合に、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高に対する税額の一定割合を仕入控除税額とする制度です。

平成26年度税制改正の概要

消費税の簡易課税制度のみなし仕入率について、現行の第四種事業のうち、金融業及び保険業を第五種事業とし、そ のみなし仕入率を現行の60%から50%とするとともに、現行の第五種事業のうち、不動産業を新たに新設した第六種 事業とし、そのみなし仕入率を現行の50%から40%とすることとされました。

原則として、平成27 年4 月1 日以後に開始する課税期間から適用されます。

適用開始時期の経過措置

平成 27 年 4 月1 日以後に開始する課税期間であっても、事業者が平成26 年 9 月30 日までに『消費税簡易課税制度選択届出書』を提出した場合は、その届出書に記載した「適用開始課税期間」の初日から 2 年を経過する日までの間に開始する課税期間については、改正前のみなし仕入率が適用される経過措置が設けられています。
なお、事業者が新たに平成26 年10 月1 日以後に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合は、平成27年4 月1 日以後に開始する課税期間から、改正後のみなし仕入率が適用されます(経過措置の適用なし)。

 

平成26年6月現在

接待交際費の損金不算入制度 平成26年度税制改正

接待交際費の損金不算入制度 改正の概要

 改正前における交際費等の損金不算入制度は、次のとおりとされていました(旧措法61の4)。

  • 中小法人以外の法人・・・支出する交際費等の全額が損金不算入
  • 中小法人・・・・・・・・支出する交際費等の額のうち年800万円(以下「定額控除限度額」といいます。)を超える部分の金額が損金不算入

(注)「中小法人」とは、事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人をいい、普通法人のうち事業年度終了の日における資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人などの一定の法人による完全支配関係がある子法人等を除きます。以下同じです。

 平成26年度税制改正では、この交際費等の損金不算入制度について、その適用期限を平成28年3月31日まで2年延長するとともに、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除きます。以下「飲食費」といいます。)であって、帳簿書類に飲食費であることについて所定の事項が記載されているもの(以下「接待飲食費」といいます。)の額の50%に相当する金額は損金の額に算入することとされました(措法61の4①④、措規21の18の4)。

(注)

  1. 「社内飲食費」とは、飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものをいいます。以下同じです。
  2. 1人当たり5,000円以下の飲食費で書類の保存要件を満たしているものについては、従前どおり、交際費等に該当しないこととされています(措法61の4④二・⑥、措令37の5①、措規21の18の4)。

 なお、中小法人については、接待飲食費の額の50%相当額の損金算入と、従前どおりの定額控除限度額までの損金算入のいずれかを選択適用することができ、定額控除限度額までの損金算入を適用する場合には、確定申告書、中間申告書、修正申告書又は更正請求書(以下「申告書等」といいます。)に定額控除限度額の計算を記載した別表15(交際費等の損金算入に関する明細書)を添付することとされています(措法61の4②⑤)。

これらの改正は、法人の平成26年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます(改正法附則77)。

飲食費の範囲

 飲食費について法令上は、「飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除きます。)」と規定されています(措法61の4④)。このため、次のような費用については、社内飲食費に該当するものを除き、飲食費に該当します。

  •  自己の従業員等が得意先等を接待して飲食するための「飲食代」
  •  飲食等のために支払うテーブルチャージ料やサービス料等
  •  飲食等のために支払う会場費
  •  得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差入れを行うための「弁当代」(得意先等において差入れ後相応の時間内に飲食されるようなもの)
  •  飲食店等での飲食後、その飲食店等で提供されている飲食物の持ち帰りに要する「お土産代」

(注)接待飲食費は、「交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く。)であって、帳簿書類により飲食費であることが明らかにされているもの」とされており、ここでいう「飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く。)」は、改正前の飲食費の定義である「飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除く。)」と同一の用語であることから、その範囲は変わりません。

飲食費に該当しない費用

次に掲げる費用は飲食費に該当しません。

  • ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用
    通常、ゴルフや観劇、旅行等の催事を実施することを主たる目的とした行為の一環として飲食等が実施されるものであり、その飲食等は主たる目的である催事と一体不可分なものとしてそれらの催事に吸収される行為と考えられますので、飲食等が催事とは別に単独で行われていると認められる場合(例えば、企画した旅行の行程の全てが終了して解散した後に、一部の取引先の者を誘って飲食等を行った場合など)を除き、ゴルフや観劇、旅行等の催事に際しての飲食等に要する費用は飲食費に該当しないこととなります。
  • 接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するために支出する送迎費
    本来、接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用として支出したものであり、その送迎費は飲食費に該当しないこととなります。
  • 飲食物の詰め合わせを贈答するために要する費用
    単なる飲食物の詰め合わせを贈答する行為は、いわゆる中元・歳暮と変わらないことから、その贈答のために要する費用は飲食費に該当しないこととなります。

社内飲食費に該当しない費用

社内飲食費の支出の対象者について法令では、「専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する」と規定されていますので(措法61の4④)、自社(当該法人)の役員、従業員(これらの者の親族を含みます。)に該当しない者に対する接待等のために支出する飲食費等であれば、社内飲食費には該当しません。したがって、例えば次のような費用は社内飲食費に該当しないこととなります。

  • 親会社の役員等やグループ内の他社の役員等に対する接待等のために支出する飲食費
  • 同業者同士の懇親会に出席した場合や得意先等と共同で開催する懇親会に出席した場合に支出する自己負担分の飲食費相当額

帳簿書類への記載事項

 接待飲食費については、交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(社内飲食費を除きます。)で、かつ、法人税法上で整理・保存が義務付けられている帳簿書類(総勘定元帳や飲食店等から受け取った領収書、請求書等が該当します。)に、飲食費であることを明らかにするために次の事項を記載する必要があります(措法61の4④、措規21の18の4、法規59、62、67)。

  • 飲食費に係る飲食等(飲食その他これに類する行為をいいます。以下同じです。)のあった年月日
  • 飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
  • 飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
  • その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項

中方法人の選択適用

 中小法人については、接待飲食費の額の50%相当額の損金算入と、定額控除限度額までの損金算入のいずれかを、事業年度ごとに選択できることとされています(措法61の4①②)。
具体的には、申告書等に添付する別表15(交際費等の損金算入に関する明細書)において、いずれかの方法により損金算入額を計算し、申告等の手続きを行うことになります(措法61の4⑤)。