《コラム》贈与税の配偶者控除と登記

◆居住用不動産を贈与したときの配偶者控除
 婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除(配偶者控除)できます。
 この特例の適用を受けるには贈与税の申告書と次の書面の提出が必要です。
①贈与日後10日経過後の戸籍謄本・抄本
②同戸籍の附票の写し
③居住用不動産の登記事項証明書等

◆店舗兼住宅の持分贈与を受けた場合
 店舗兼住宅について、例えば居住用部分の50%の贈与をしたとして、登記面ではそれが全体の25%の持分贈与と表記されたとしても、居住用部分のみの贈与と扱われることになっています。
 また、居住用部分がおおむね90%以上の場合は全て居住用不動産として扱うことができます。

◆居住用不動産贈与と相続税の扱い
 配偶者控除適用居住用贈与不動産は、相続開始前3年内贈与加算の対象外です。
 また、その贈与が相続開始年になされた場合は、その居住用不動産のうち、贈与税の配偶者控除があるものと仮定して控除される部分は、相続税の課税価格に加算されず、相続税の対象となりません。

◆所有権移転登記は要件か?
 贈与の対象となった居住用不動産の登記事項証明書の添付は、この贈与税の配偶者控除特例の適用要件でした。でも、贈与による所有権移転登記そのものは、適用要件ではありません。
 それで、平成28年に、贈与による居住用不動産取得の事実が確認できる書類を添付する事に省令改正されました。登記事項証明書は、その事実確認書類の一つの例示例となっています。

◆登記を要件にできない色々な理由がある
 登記には第三者対抗要件はあるものの、義務ではなく、任意なので、税法の適用要件に登記を義務づけることは憚られるのだと思われます。
 それに、店舗兼住宅での登記のように、居住部分のみの登記は受け付けられないし、大きな敷地の一部の居住部分の贈与の場合、分筆等が必要となる場合などを考慮すると、測量費なども含め、登記費用負担が居住用不動産贈与の特例適用の妨害要因になってしまうからなのだと思われます。

 

《コラム》コロナとICTが特徴?令和元年分確定申告状況

◆例年の申告状況まとめだが
 国税庁は毎年、所得税等・消費税・贈与税の確定申告状況を報道発表しています。いつもなら3月末の時点でカウントしていましたが、今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、申告期限を令和2年4月16日まで延長したことにより、集計についても4月末までが対象期間となっています。
 また、「新型コロナウイルス関連で、期限内に申告することが困難な場合は、柔軟に確定申告書を受け付ける」といった対応を取っており、「納付期限は提出日」「申告書に新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請と書けばOK」となっています。その影響か、近年横ばいで少しずつ増えていた所得税及び復興特別所得税の申告人員は2,204万人(前年比▲0.8%)、所得金額は41兆6,140億円(同▲1.2%)、申告納税額は3兆2,176億円(同▲2.0%)と、いずれも前年を下回る結果となりました。

◆自宅で申告がさらに増
 国税庁HPの確定申告書等作成コーナーを利用して、e-Taxで所得税等の申告書を提出した人は195万人となり、平成30年分より約1.5倍に増加しました。
 機能を強化したスマホ専用画面での確定申告書作成・申告機能で申告した人は47万人と、平成30年分より約4倍に増加しました。新型コロナウイルス感染症の影響もあってか、平成30年分に確定申告会場でスマホ申告した方のうち、2人に1人が令和元年分の申告を自宅等からe-Taxで提出しているというデータもあり、確定申告についてはICTの普及がさらに進んでいます。

◆マイナンバーカード普及には至らず?
 e-Taxの送信方式を見てみると、マイナンバーカード方式が59.7万人に対して、税務署で発行できる後発のID・パスワード方式が148.8万人と、2.5倍近くの開きがあります。確定申告会場でマイナンバーカード申請コーナーを設置したりもしていますが、イマイチ普及には寄与できていない結果となっています。
 2020年9月からのキャッシュレス決済チャージで付与されるマイナポイントにも、マイナンバーカードが必須となりますが、はたしてマイナンバーカードはどこまで普及するのでしょうか。

《コラム》令和2年税制改正大綱 納税環境編

◆振替納税の通知依頼等がe-Taxで可能に!
 令和2年の税制改正により、今まで電子申請・申告ができず、紙の書類で提出していたものが、e-Taxの利用により手続できるようになりそうです。
(1)振替納税・ダイレクト納付の申請
 次の書類の提出は、令和3年1月以後、e-Taxによる電子申請が可能となります。
 ①振替納税の通知依頼
 ②ダイレクト納付の利用届出
 なお、これらの申請手続では、申請者の電子署名や電子証明書の送信は不要とされました(振替納税については、納税地の異動があった場合の手続も簡素化されます)。
(2)準確定申告の電子手続の簡素化
 今まで電子申告ができなかった所得税の準確定申告について、その途が開かれそうです。e-Taxにより所得税の準確定申告書を提出する場合、相続人の電子署名・電子証明書の送信は次のようになります。
 ・申請等相続人:電子署名・証明書送信が必要
 ・それ以外の者:確認証を送信(署名等は不要)
 大綱では、税理士の代理送信等については、明らかとされていませんが、令和2年分以後の準確定申告より適用されます。

◆電子帳簿等保存制度の見直し
 電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法が令和2年10月より追加されます。
 ①発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録の受領・保存
 ②電磁的記録の訂正・削除等が確認できるシステムによる記録の授受・保存
 この改正によりカードや電子マネーの履歴をクラウド上で電子データ保存する方法が認められます(改変不可が条件)。

◆円滑な申告・納税のための環境整備
 納税証明書の電子的請求について、電子委任状を添付して行うことができるようになります(委任者の電子署名等は不要)。

◆利子税・還付加算金等の割合の引下げ
 令和3年以後は、①利子税特例基準割合、②猶予特例基準割合、③還付加算金特例基準割合が年7.3%未満の場合には、次のようになります。
 ・平均貸付割合+年0.5%(現行年1%)
 また、相続税・贈与税に係る利子税は、次のようになります。
 ・利子税の割合×利子税特例基準割合/年7.3%

 

《コラム》令和2年税制改正大綱 資産課税編

◆所有者不明土地等に係る措置(固定資産税)
 土地・家屋の固定資産税は、原則として土地の「所有者」(登記簿上の所有者)に課税されますが、昨今の「所有者不明土地等」の増加に伴い、次の措置が設けられます。
(1)「現に所有している者」の申告制度化
 市町村長は、その市町村内の土地・家屋について、登記簿に「所有者」として登記がされている個人が死亡している場合には、その土地・家屋を「現に所有している者」(現所有者)に、条例で定めるところにより、賦課徴収に必要な事項を申告させることができることとなりました。
(2)所有者不明土地等の「使用者」に課税
 市町村は、調査を尽くしてもなお固定資産の所有者が一人も明らかとならない場合には、その「使用者」を所有者とみなして固定資産課税台帳に登録し、固定資産税を課することができることとされました。

◆国外財産調書制度等の見直し(相続税等)
(1)相続直後の調書等への記載の柔軟化
 相続開始年の年末に有する国外財産に係る国外財産調書については、相続・遺贈により取得した国外財産(相続国外財産)は記載しないで提出できるようになりました。
(2)提出がない場合等の加算税等の見直し
 国外財産調書の提出がない場合の過少申告加算税の加重措置の適用対象に、相続国外財産に対する相続税の修正申告等があった場合等が追加されました。
 また、国外財産調書に記載すべき国外財産に関する書類の提示・提出がない場合の加算税の軽減措置・加重措置の特例が創設されました。

◆その他の改正(相続税・贈与税)
(1)農地等の納税猶予制度の対象拡大
 特例適用農地等の範囲に、三大都市圏の特定市の市街化区域内に所在する農地で、地区計画農地保全条例(仮称)により制限を受ける一定の地区計画の区域内に所在するものが追加されます。
(2)医業継続に係る納税猶予制度の延長
 適用期限が3年延長されます。
(3)相続税の物納の特例の対象拡大
 適用対象となる登録美術品の範囲に制作者が生存中である美術品のうち一定のものが追加されます。

《コラム》10月から適用されるマイホームの特例 消費税増税と住宅関連制度

いよいよ本年10月からの消費税率引き上げが迫ってきました。税率引き上げの影響の大きい住宅については、税制上の対策だけではなく、税制以外の対策も取られています。

◆住宅についての税制上の対策措置
(1)住宅ローン控除等の拡充(所得税)
 消費税率10%の適用を受ける住宅の取得等については、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間に居住の用に供した場合、住宅ローン控除の適用期間が10年間から13年間に延長されます。
(2)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税枠の拡充(贈与税)
 直系尊属からの贈与により取得した住宅取得等資金で一定の要件を満たすものについては、非課税限度額までの金額について贈与税の課税価格に算入されません。従来の非課税枠は最大1,200万円でしたが、消費税率10%の適用を受ける住宅については、非課税枠が最大3,000万円まで拡充されています。

◆税制以外の対策措置
(1)すまい給付金の拡充
 すまい給付金は、消費税率引き上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設した制度です。消費税率が8%に引き上げられた平成26年4月にスタートした制度で、最大30万円給付されるものでした。本年10月の消費税率10%への引き上げ後は、最大給付額が50万円まで増額されます。
 新築・中古、住宅ローンの利用の有無にかかわらず給付が受けられますが、収入(都道府県民税の所得割額)によって給付額が変わる仕組みとなっています。
(2)次世代住宅ポイント制度の創設
 次世代住宅ポイント制度とは、一定の省エネ性、耐震性、バリアフリー性能等を満たす住宅や家事負担の軽減に資する住宅の新築やリフォームをした人に対し、さまざまな商品と交換できるポイントを発行する制度です。
 住宅の新築(貸家を除く)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は35万ポイント、住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合、1戸あたりに発行されるポイントの上限は30万ポイントです。

(後編)個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設

(前編からのつづき)

 「承継計画」は、2019年4月1日から2024年3月31日までの5年以内に、あらかじめ都道府県に提出する必要があります。
 対象となる事業用資産とは、被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地(面積400平方メートルまでの部分に限る)、建物(床面積800平方メートルまでの部分に限る)及び建物以外の減価償却資産(固定資産税又は営業用として自動車税や軽自動車税の課税対象となっているものその他これらに準ずるものに限る)で青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているものをいいます。

 なお、被相続人は相続開始前において、相続人は相続開始後において、それぞれ青色申告の承認を受けていなければならず、相続人は、相続税の申告期限から3年ごとに継続届出書を税務署長に提出する必要があります。
 また、贈与税の納税猶予制度も創設されており、受贈者が18歳(2022年3月31日までの贈与は20歳)以上の者に限られ、猶予税額の納付、免除等は相続税の納税猶予制度と同様となっておりますので、該当されます方はご確認ください。

(注意)
 上記の記載内容は、令和元年6月10日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

三種の神器は非課税に

このほど行われた皇位継承では、皇位の証しとされる八咫鏡(やたのかがみ)、草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)の「三種の神器」も新天皇に受け継がれました。1989年の天皇即位時は、これらは「相続」されましたが、今回は生前退位のため「生前贈与」となりました。そのため、相続と違って非課税とされていない「贈与」の取り扱いについて、急きょ生前贈与も非課税とする措置が取られています。

 三種の神器は、天皇の私的財産と位置付けられています。一方で、皇室経済法で定められた「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」ともされていて、相続税は課税対象外になっています。しかし、退位による生前贈与はこれまで想定されていなかったため、通常であれば課税対象となっていました。

 しかし、新たに皇室典範特例法の規定を設け、今回の皇位継承に限り特別扱いして贈与税を非課税とする措置がとられました。これにより、神話の世界の天照大神(あまてらすおおみかみ)にまつわるとしている三種の神器には贈与税が課されないことになりました。

 ただ今回の措置はあくまでも一回限りの特例です。日本全体にとって問題となっている少子高齢化は皇室といえど避けられず、女性天皇や女系天皇の議論同様、生前退位やそれに伴う税処理についての恒久的な議論も将来的には求められそうです。

 宮内庁は現在、相続税の対象外となる「由緒ある物」に約600件を指定しています。三種の神器以外に、宮中祭祀が行われる宮中三殿といった不動産や歴代天皇の直筆の書などの動産が含まれています。

<情報提供:エヌピー通信社>

 

《コラム》社団法人って何?

◆社団法人とは
 社団法人と言うと、○○協会とか、○○協議会等公益性の強いイメージがありますが、それはかつて社団法人は、民法34条や特別法に基づき設立される公益目的の団体の名称だったからです。
 しかし2006年の公益法人制度改革により、一般社団法人と公益社団法人と2つになり、公益社団法人は、許認可制で今まで通り公益性が必要ですが、一般社団法人は誰でも簡単に設立できるようになりました。

◆一般社団法人とは
 人が集まった団体と言った程度の意味です。人が集まって団体を設立することは、全く自由です。しかしその団体が団体として活動したり資産(土地や建物)を所有するためには、一個の団体として法律的な認知をしてもらう必要から、法人格を付与されたものが一般社団法人です。

◆普通一般社団法人と非営利型一般社団法人
 税務上、一般社団法人は株式会社等と同様利益に対して通常の法人税が課せられます。しかし元来社団法人は営利を目的としてもしなくてもよい団体ですから、一般社団法人で営利を目的としていないことが明確(非営利型一般社団法人)であれば、税務上の優遇措置を受けられます。その要件は概ね以下です。
(1)解散したときは、残余財産を国や一定の公益的な団体に寄贈すること
(2)特定の個人又は団体に特別の利益を与えていないこと
(3)各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

◆優遇措置
 非営利事業に対しては課税されません。社団法人設立にあたって出資した資金や、その後社団法人に寄付した基金は相続財産から除かれます。これを利用した相続対策が多発したため「贈与した者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められる場合には、受け取った側の一般社団法人を個人とみなして贈与税又は相続税を課税する」となっておりますのでご留意ください。

 

教育資金贈与特例がマイナスの見直し

30歳未満の子や孫への教育資金の一括贈与を1500万円まで非課税にする「教育資金目的の一括贈与」の特例について、2019年3月末とされていた期限が2年間延長されるとともに、適用対象が狭められます。現在、贈与を受ける側の子や孫は30歳未満であることのみが条件となっていますが、大綱ではこれに収入要件を加えました。

 現在、贈与を受ける側の子や孫は30歳未満であることだけが条件となっていますが、大綱では所得1千万円という収入要件を加えました。自分の収入の中で学ぶことが可能な人は非課税特例の対象外にするということのようです。

 また贈与された資金の使い道も限定されます。特例ではスポーツジムやピアノなど趣味の習い事も適用対象とされているのですが、23歳以上の人については、19年7月以降は趣味の習い事には使えなくなります。ただし厚生労働省が認める職業訓練や資格取得の講座は認められることとなります。さらにこれまでと異なり、贈与者の死亡前3年以内に特例を適用していると、相続税が課税される「持ち戻し」の対象となるよう改められます。

<情報提供:エヌピー通信社>

《コラム》平成31年度税制改正大綱 資産課税編

◆個人事業者版の事業承継税制創設
 平成30年度税制改正では、非上場会社の事業承継税制の大胆な見直しが行われましたが、これに続き31年度改正では、個人事業者の事業承継税制が創設されました。
 総務省の調査では、平成37年には個人事業者の73%(150万人)が70歳以上となると報告され、世代交代を後押しする施策が求められています。そのため、10年間の時限措置として、承継資産(土地・建物・機械等)に係る贈与税・相続税の100%が納税猶予される制度が整備されます。
 なお、この制度は小規模宅地等(特定事業用宅地等)との選択適用になります。

○個人事業者の事業用資産の納税猶予(相続税)
対象者:認定相続人(承継計画の認可)
適用期間:H31.1.1~H40.12.31
要件:①相続又は遺贈により特定事業用資産を取得し、事業を継続していくこと②申告期限までに担保提供・申請書提出
対象資産:特定事業用資産(不動産貸付事業除く)
①土地(地積400㎡まで)、②建物(床面積800㎡まで)、③一定の償却資産
※青色申告書に添付する貸借対照表に計上されているもの
承継後:継続届出書を税務署に提出

◆特定事業用宅地等(小規模宅地)の見直し
 小規模宅地等の減額制度の濫用を防止する観点から、特定事業用宅地等から相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除かれることとなります。ただし、その宅地の上で事業供用される償却資産の価額が土地の価額の15%以上であれば、適用対象とされます(H31.4以後の相続より適用)。

◆民法の成人年齢引下げに伴う改正
 平成34年4月以後の相続・贈与より、次の年齢が20歳から18歳に引き下げられます。
・相続税:未成年者控除の対象者の年齢
・贈与税:下記の受贈者の年齢要件
①相続時精算課税制度、②直系尊属から贈与を受けた場合の特例税率、③非上場株式等に係る贈与税の納税猶予

◆一括贈与非課税に受贈者の所得要件が追加
 「教育資金」、「結婚・子育て資金」の一括贈与非課税については、受贈者の所得要件が設けられることとなりました。平成31年4月以後の贈与からは、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用できません。また、23歳以上の趣味の習い事代は「教育資金」の範囲外とされました(H31.7以後の贈与より)。